カジュアル衣料品店「ユニクロ」などを世界的に展開するファーストリテイリングが、感染症や地政学リスクに直面している。大きな収益源となった中国事業では、新型コロナウイルス感染拡大を受け複数の都市が事実上のロックダウン(都市封鎖)となり、一部店舗の営業が困難な状況だ。欧州最大の店舗数を構えるロシアも、ウクライナへの軍事侵攻の影響で当面は事業停止の状態が続く。原材料価格の高騰もあり、グローバル企業のかじ取りは難しさを増している。
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「本気で次の成長を目指す」。柳井正会長兼社長は、14日の決算説明会でこう強調した。
中国に香港や台湾を含む中華圏事業が、海外ユニクロ事業の営業利益に占める割合は約6割。深圳や上海では都市封鎖が起き、3月は最大133店舗が臨時休業した。14日に発表した令和4年2月中間連結決算で中華圏事業は減収減益となり、通期でも大幅な減益を見込んだ。
一方、ウクライナへの軍事侵攻を受け、ロシア国内の全50店舗も3月から営業を停止。下期のロシア事業は赤字を見込む。
原材料価格の高騰も深刻だ。柳井氏は現状の価格高騰を踏まえると「今のプライスでは不可能」としつつ、「日本の経済情勢から考えると安易な値上げはできない」と述べた。円安が日本経済に与える影響についても「メリットは全くない。行方を心配している」と懸念を示した。
一方、北米や欧州での販売は好調で、4年8月期の連結業績予想は、最終利益を1750億円から1900億円に上方修正した。中国などでの落ち込みを取り返すべく、北米での出店強化を打ち出し、現在57ある店舗を5年後に200店舗にする計画も公表した。
岡崎健最高財務責任者(CFO)は「グローバルで収益の柱の多角化を一層推進する」との姿勢だ。(加藤園子)