【ニューヨーク=平田雄介】国連のグテレス事務総長は13日、ロシアのウクライナ侵攻に伴う食料、エネルギー、金融市場の混乱により、世界107カ国で17億人が深刻な打撃を受けたとの報告書を発表した。うち5億5300万人が貧困状態にあり、2億1500万人が栄養不足。途上国の債務不履行(デフォルト)の懸念も強まっている。
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グテレス氏は会見で「食糧やエネルギー価格の上昇で貧困と飢餓が拡大している」と指摘。新型コロナウイルス禍で大きな打撃を受けた途上国が「さらに苦しむ事態になった」として国際的な支援強化を訴えた。
報告書によると、小麦とトウモロコシの価格は年初から約30%上昇。原油価格は昨年12月1日から46%、天然ガスは49%上昇した。物資の輸送に際し、紛争地などを迂回するため、輸送コストがかさんだほか、国際サプライチェーン(供給網)そのものが混乱したことも事態を悪化させた。
インフレへの懸念から中央銀行の多くが予想より早い時期の金利引き上げを示唆し、途上国の債務返済コストが上昇した。後発開発途上国や低所得国の6割が債務超過か、債務超過のリスクが高い状態にある。
報告書は、新型コロナの打撃から回復する前に食料価格が高騰した連鎖反応として「社会不安が広がる恐れがある」と指摘した。小麦輸入の半分以上をロシアとウクライナに依存する国は36カ国に上り、食料やエネルギーの「円滑な流通を図るべきだ」と提言した。