Z世代に好評の6速マニュアル仕様
だからだろうか、走り味は内燃機関の爽快感が意識できる。低回転域からの力強さはシリーズ式ハイブリッドであるための電気モーターパワーゆえである。だが、加速する過程はガソリンエンジンのそれだ。パワーモードを攻撃型にアジャストすると、そこはもうスポーツエンジンの世界に落とし込まれる。
アクセルペダルに連動してエンジンが吠える。実際には、アクティブにサウンドシステムが作動し、シンセサイザーで作り込んだ電子音を重ね合わせる。リアルな吸気音も加えている。昭和世代が慣れ親しんだエンジンサウンドなのである。
ドライバー正面には、タコメーターであるかのような大径のパワーメーターが組み込まれている。それがまるでガソリンエンジンであるかのように躍動感を伴ってはじける。2モーター式電動CVTはつまり、無段階変速機構なのだが、6速マニュアルであるかのように盤上を踊る。階段を上るようにステップする。聞かされなければ、電気モーターで駆動しているハイブリッドとは気が付かないかもしれない。それほど内燃機関の感覚を残しているのである。
6速マニュアル仕様は特に20代を中心とする“Z世代”に好評だという。そこから想像できるのは、内燃機関が忘れられない昭和世代の救いではなく、18年後も現役でいる世代に支持されていることである。
18年後にはもうホンダの内燃機関を購入することができないというのに…である。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。