『心理的安全性のつくりかた』石井遼介著(日本能率協会マネジメントセンター・1980円)
「怒られそうだから言うのはやめておこう」「どうせ相談しても聞いてもらえない」-。職場でこんなことを思ったことがある人は多いのでは。働き方改革が進む中で近年、注目されているのが「心理的安全性」だ。疑問や率直な意見を気兼ねなく言えることを指す。生産性が高まるとして、グーグルが実践していることでも知られている。
本書は、「ぬるま湯組織」とは一線を画す、高い目標に向かうチーム作りの方法を指南。話しやすさや助け合いなど日本人が心理的安全性を感じる要素のほか、罰や叱責のデメリットも論じる。精神論ではなく行動を重視し、例えば感謝を伝えるときでも、出来事を振り返り、何がありがたかったのか理由を掘り下げるといった具体的な手法を提案。実践的な内容が好評だ。
令和2年9月に出版され、累計部数は紙と電子合わせて12万5000部。「テレワークで生産性に課題を感じた人や命令統制型マネジメントで失敗した人にも響いたようです。人事関係者のほか、経営者や管理職にも読まれています」と編集担当者。個性や能力を引き出すことが、きれいごとではなく必要なことだと腹落ちできる1冊だ。(油原聡子)