• 日経平均28249.2473.37
  • ドル円134.45134.49

資源価格の上昇で逆風はさらに強まる…日本経済をさらに停滞させる「円安誘導」の巨大なツケ

PRESIDENT Online

現在は“米国一人勝ち”の状況だが…

3月、中国では消費者物価指数が同1.5%上昇した。中国でも企業物価指数と消費者物価指数の上昇率のギャップは大きい。中国の消費者物価を品目ごとに見ると、ガソリンなどの価格は上昇しているが、消費財など生活に欠かせないモノの価格上昇が抑えられている。不動産バブル崩壊、ゼロコロナ対策の徹底による動線の寸断、さらにはIT先端企業への締め付け強化による株価下落などが中国の消費者心理を冷え込ませ、消費が伸び悩んでいる。

ユーロ圏でも3月の消費者物価(速報)は同7.5%と、企業物価との乖離(かいり)が大きい。増加するコストを価格に転嫁できない状況が続けば、いずれ企業の業績が圧迫されるだろう。このように考えると、足許の世界経済において、米国は相応の強さを維持しているが、それ以外の国と地域の景気の弱さが目立つ。それが米国と、それ以外の国と地域の消費者物価指数の上昇率の違いに表れている。

ウクライナ情勢やコロナ禍が落ち着いても物価高は続く

世界の物価の展開は、いつまで、ウクライナ危機やコロナ禍が続くかに影響される。一つのシナリオとして、ウクライナ情勢やコロナ禍が徐々に落ち着いてくると、世界全体で消費動向は緩やかに回復することが予想される。その一方で、供給制約が深刻な状況は続くだろう。需要が回復することによって、世界のインフレ懸念は高まるだろう。

それとは逆に、情勢改善に時間がかかる展開も想定される。ウクライナ情勢が深刻化すれば、世界の分断はいっそう深まるだろう。その場合、エネルギー資源などの商品価格は上昇し、供給制約も強まる。各国の企業物価は一段と上昇する可能性が高い。コストプッシュ型のインフレ圧力は高まり、米国の企業であってもコスト転嫁を進めることが難しくなるだろう。物価上昇が鮮明化すると同時に各国の企業業績が悪化するとの懸念が世界的に高まるだろう。現時点で、短期のうちに世界の物価上昇圧力が低下する展開は想定しづらい。

それに加えて、FRBは金融政策の正常化(利上げとバランスシート縮小)を急ぐ。それは米国経済に負の影響を与える。今後、米国では追加の利上げや流動性の吸収が同時に実施され、長期金利は上昇するだろう。

円安と資源価格上昇で逆風はさらに強まる

金利の上昇は、期待先行で株価が上昇し割高感の強いナスダック上場銘柄を筆頭に株価の下落リスクを高める要因だ。株価が本格的に調整すれば、負の資産効果によって個人の消費意欲は低下する。それによって、米国が景気後退(2期連続でGDP成長率がマイナスになること)に陥る展開は排除できない。足許の世界経済を支える米国の経済成長率の低下は、わが国をはじめとする世界経済の下振れリスクを高める。

今後、相応の期間にわたって世界の物価は上昇する可能性が高い。それと同時に、コスト増加による企業業績の悪化などによって、主要国経済の成長率は低下するだろう。わが国経済は円安と資源価格の上昇による交易条件のさらなる悪化に直面することになりそうだ。それに加えて、人口の減少や正規と非正規雇用者の経済格差の拡大などによって国内経済は縮小均衡に向かう。わが国への逆風は強まるだろう。


真壁 昭夫(まかべ・あきお)

多摩大学特別招聘教授

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。<br>

----------

(多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫)


Recommend

Biz Plus

Recommend

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)