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「日本のラーメンは驚くほど美味しいけれど…」中国の若者がカップ麺を嫌がるようになった理由

PRESIDENT Online

「日本のカップ麺は美味しいけど、中国は…」

上海の独身男性に聞いてみると、「以前は週末も買い置きしていたカップ麺を食べていたが、デリバリーが便利になってからは、温かい中華料理やピザや日本料理を配達してもらっている。そのほうが100倍美味しいし、中国のデリバリーは値段もそんなに高くないから」と話していた。この男性は日本旅行に来て、日本でもカップ麺を食べたことがあると話しており「日本のカップ麺はわざわざ買って食べたいと思うくらいの美味しさ。驚きました。中国のカップ麺はそんなに美味しくない」と言っていた。

2つ目は、中国人の健康志向の高まりによって、即席麺を避けるようになってきたことだ。美食のレストランが急激に増えて選択肢が増えたことや、前述のような自国食品への不信感なども関係していると思うが、もともと中国では公園で体操や太極拳などをすることが盛んであり、医療への不信感、「医食同源」の考え方などもあって健康意識が高い人が多かった。だが、以前は経済的な理由で、あまり健康によくないと思っていても、「早い、安い、手軽」な即席麺に手を伸ばす人が大勢いた。

中国人の意識を変えた「爆買い」ブーム

ここで少し中国の即席麺について紹介すると、中国では日本のように調味料(醤油、味噌、塩など)の味でジャンル分けしたものではなく、中華料理(紅焼牛肉、西紅柿鶏蛋、香辣牛肉など)の味でジャンル分けされている。日本同様、袋麺タイプ(5個パックなど)やカップ麺タイプ(普通サイズやビッグサイズ)があり、スーパーでは日本の何倍もの広い売り場で売っている。スーパーやメーカーによって異なるが、袋麺タイプ(5個パック)は13~20元(約190~380円)くらい、カップ麺は5~9元(約95~170円)くらいだ。

余談だが、中国のカップ麺はプラスチック製のフォークがカップの中に入っており、外出先でもお湯さえあれば食べられるようになっているのが大きな特徴。以前は空港やターミナル駅の売店では必ずカップ麺が売られており、搭乗前に椅子に座って食べている人が非常に多かった。あちこちに給湯器が設置されており、お湯を簡単に手に入れられることと、空港などの飲食店があまりにも高くてまずかったから、仕方なくカップ麺で腹ごしらえしていたという人が多かった。

ところが、2014年ごろから、中国人の海外旅行ブーム、いわゆる「爆買い」が始まり、この現象をきっかけとして、彼らの健康に対する意識は、それまで以上に大きく変わり始めた。海外の観光地を見て回るだけでなく、ネット検索で海外のさまざまな情報を入手し、海外の社会やそこで暮らす人々の生活ぶり、健康意識などを初めて観察するようになり、知識と経験が増えていったのだ。

日本の青汁やサプリで健康に目覚める人も

とくに大きな影響を受けたのが隣国の日本だ。中国人の海外旅行先として常に上位に入っており、日本でも中国人の「爆買い」は話題になったが、彼らが日本で最も多く買っていたものの一つが医薬品や健康食品だった。

中でも日本ならではの商品として中国で有名になったものが「青汁」などの健康食品やサプリ。購入した彼らはその効果を実感したり、中国に住む祖父母や親戚などに配ったりするようになり、中国に帰国後もネット販売で定期的に購入する人が増えた。

中国には漢方薬を扱う専門店や薬局(西洋薬や中国薬)はあるものの、日本のように気軽に医薬品や健康食品を買えるドラッグストアは存在しない。だが、ネット販売でどんなものでも手に入ることから、中国メーカーも日本をまねて「青汁」などの製造を始めた。

また、健康食品だけでなく、日本で人気の納豆を中国のスーパーでも買ったり、砂糖が入っていない烏龍茶なども人気になったりし始めた(それまでは甘い烏龍茶のほうが人気だった)。さらに、自宅のベランダで野菜を栽培したり、野菜ジュースを手作りしたりする人も増えた。

デリバリーは便利なので依然として人気があるが、コロナ禍が始まって以降、「誰の手を介して作られた料理だか分からないし、配送員のことも100%信頼できない。自分で手作りするのがいちばん安全だ」といって、デリバリーに頼らず、オフィスに手作り弁当や野菜サラダを持参する人も増えた。

ロックダウンでも即席麺は選ばれていない

むろん、海外旅行できるようになったことと経済的に豊かになっていった時期が重なるため、日本での「爆買い」だけが彼らの健康に対する意識を変えたというのは言い過ぎかもしれない。だが、ネット上の情報量が爆発的に増えたことで、「即席麺はあまりよくない」「できるだけ手作りをしよう」という認識が高まっていることは事実だ。

今回、ロックダウン中の上海に住む私の中国人友人たちの中には、「モヤシ栽培器でモヤシを栽培して炒め物を作った」、「パンを手作りした」と言って写真をシェアしている人が多く、この状況でもカップ麺を食べている人はいなかった。

「爆買い」のとき、日本に観光を兼ねたがん検診などの医療ツアーに来る富裕層もいたが、そこまでお金はかけられないけれど、健康食品を取るなどして、少しでも長生きしたい、健康を維持したいと切実に思う人が増えた。ゼロコロナという厳しい政策の下で暮らす中で、そうした危機意識はますます高まっているようだ。

だからこそ、ロックダウン直前のスーパーでも、即席麺を最優先で買い物カゴに入れたという人は少なかったのだろう。そうした意識の変化が、2015年ごろを境とした即席麺の売り上げ減少へとつながっていったのではないか、と考えられる。

中島 恵(なかじま・けい)

フリージャーナリスト

山梨県生まれ。主に中国、東アジアの社会事情、経済事情などを雑誌・ネット等に執筆。著書は『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日経プレミアシリーズ)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか』(中央公論新社)、『中国人は見ている。』『日本の「中国人」社会』(ともに、日経プレミアシリーズ)など多数。新著に『中国人のお金の使い道 彼らはどれほどお金持ちになったのか』(PHP新書)、『いま中国人は中国をこう見る』(日経プレミアシリーズ)などがある。

(フリージャーナリスト 中島 恵)


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