路線価に基づき算出した遺産相続マンションの評価額が市場価格より低すぎるとして国税当局が例外規定を適用し、追徴課税した処分の是非が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(長嶺安政裁判長)は19日、国税の処分は「適法」として原告側の上告を棄却した。国税勝訴の1、2審判決が確定した。
路線価は市場価格に比べて低く設定されることが多く、生前に不動産を取得すれば現金で相続するより相続税を安く抑えられるため、節税対策に使われることが多い。
原告は平成24年に94歳で死亡した男性の子供ら3人。原告は男性が21年に計約13億8700万円で購入した東京都内と神奈川県内のマンション計2棟を相続した。路線価に基づく2棟の評価額は計約3億3千万円で、購入額の4分の1以下だった。
銀行への借り入れなどもあり、原告は相続税を「0円」と申告。これに対し国税当局は、路線価に基づく評価額が「著しく不適当」とされる場合は別途鑑定し評価額を決められるとする例外規定を適用。新たに鑑定した結果、2棟の評価額は計約12億7300万円だったとして申告漏れとみなし、3億円超を追徴課税した。
この日の判決では「不動産の購入・借り入れがなければ、相続による本来の課税額は6億円超になっていた」と指摘。意図的な節税対策だったとした上で「ほかの納税者との間に不均衡を生じさせ、実質的な税負担の公平に反する」として、例外規定の適用は妥当だと結論づけた。