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動物園がアマゾン活用 「ほしい物」をリストで直訴

動物園が求めるものを動物好きのファンらが寄付する支援策が全国に広がりつつあり、飼育環境の向上に一役買っている。通販サイト「アマゾン」の「ほしい物リスト」を通じて寄付する仕組み。動物園の財政的な支援につながるだけに、専門家は「市民と動物園の絆を強めるきっかけにもなる」としている。

高いところに取り付けられたエサを立ち上がって食べる天王寺動物園のアムールトラの風(ふう)=大阪市天王寺区(柿平博文撮影)
高いところに取り付けられたエサを立ち上がって食べる天王寺動物園のアムールトラの風(ふう)=大阪市天王寺区(柿平博文撮影)

役立つ寄付物品

「立つとあんなに体が大きかったんや」

4月13日午後、天王寺動物園(大阪市天王寺区)。トラ舎の放し飼いスペース前に集まった来園者から感嘆の声が漏れた。視線の先は、オスのアムールトラ「風(ふう)」(2歳)。幼体ながら体長は2メートルに及ぶ。全身を伸ばし、樹木の柵につるしたエサにかぶりついた。

このエサをつるしていたひもが、ほしい物リスト経由で寄付されたものだ。ひもは「ケーシング」と呼ばれ、ソーセージなどの皮に使われる天然素材で、トラがエサと一緒に食べてしまっても安全だ。

飼育担当の辻本英樹さんは「普通のロープでは誤飲が心配。ちょっとしたことに感じるかもしれないが、安心感は大きく違う」と強調する。

立ち上がってエサに食いつくなど動物の本来の行動を引き出すことは、ストレス軽減になり、動物の健康促進にもつながる。この給餌(きゅうじ)方法は寄付を受けたケーシングを用いることで初めて実現したという。

「想像以上の反響」

支援を依頼する物品一覧として、ほしい物リストはホームページの「総合案内」→「天王寺動物園を応援してください」から確認できる。リストを見て、提供したい人がサイトを通じて購入すれば、園に届く仕組みだ。

導入のきっかけは、園に寄せられる「善意」を生かそうとの発想から。これまでに、食材や物資提供の申し出が寄せられたが、衛生面の懸念があったり、ただちに必要としないものだったりと、提供を断らざるを得ないこともあった。

昨年9月にスタートし、断続的にこれまでに3度リストを公開。今年3月末までにポリタンクや体重計、ヒーターなど52品目96点(約55万円相当)の寄付があった。告知は初回だけだったが、「1週間程度でリストが空になる。想像以上の反響」(担当者)と受け止める。

「ふるさと納税」のような返礼品こそないが、所得税の寄付金控除の対象になる。また、園側が寄付された物品を実際に使用する様子をツイッターで発信するため、「役立ってうれしい」と充実感も大きい。

ただ、園が必要なものや量を精査した上で公開するため、リストに物品が常時載っているわけではない。

動物園の持続を後押し

こうした寄付を受けながら園運営を行う仕組みは、欧米では普及している。日本では、大牟田市動物園(福岡県)が先駆けとされ、平成30年12月に始まった。その後も千葉市動物公園や札幌市円山動物園、京都市動物園などが続いた。

昨年4月に全国で初めて地方独立行政法人に移行した天王寺動物園を含め、多くの園には公金が投入されているが、潤沢とはいえないのが実情。新型コロナウイルス禍で入場者数も目減りし、台所事情はどこも苦しい。

同園の職員によると、暗い獣舎などで獣医が動物の腹部を確認する際、よく見えるように光を当てるが、スマートフォンのライトで代用することもあったという。「ほしいと思っていても『あれば便利』ぐらいだと買えない」とし、実感を込めて「寄付は本当にありがたい」と話した。

動物園の経営に詳しい帝京科学大の佐渡友(さどとも)陽一講師は、「動物たちの力になりたい市民と、親切心を無駄にしたくない動物園の意図がマッチングした形」とみる。

その上で「従来は『塊(かたまり)』としての来園者数ばかりがクローズアップされていたが、寄付を受けることは動物園が一人一人と深くつながる機会。将来的な園運営にとってもプラスだ」と語った。(小泉一敏)


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