ローソン「ゴーストレストラン」 “街のほっとステーション”進化のベクトル

    ローソンが「ゴーストレストラン」事業の展開を開始します。

    UberEatsなどデリバリー産業の盛り上がりと連携して運営する客席をもたないレストラン、いわゆる「ゴーストレストラン」事業にいよいよ大手コンビニエンスストアが参画するのです。

    早々に関東圏100店舗、2025年度には全国1000店舗での計画は意欲的です。

    常に進化を図る精神こそコンビニ業態の強み(写真筆者)
    常に進化を図る精神こそコンビニ業態の強み(写真筆者)

    当たり前のように「ゴーストレストラン」と言っていますが、こんな言葉少なくともちょっと前までは存在しなかったはず。

    マーケティングに関わる人間は何でもかんでも聞いたこともないカタカナ言葉を使いたがって“カッコつけてるよね“と、生暖かい目で見られがちですが、それなりの理由がないわけではないのです。一には、外資系、日系問わずそもそもグローバルな活動をしている企業も多く当たり前に英語を使わざるを得ない環境があり、海外発のキーワードにもいち早く触れやすいこと。そしてこちらの方が主な理由かもしれませんが、特に日本市場になじみのない外国語を使うことで、何らかの“新しさ“”新鮮さ”を表現できる(もしくは、そんな気分になれる)ということ。

    今まで市場に無い“素敵な何か”を訴求し生活者に気づいてもらおうと日々奮闘するマーケティング関係者にとっては、聞いたことのない言葉の持つパワーはなかなかに魅力的なのです。特に、ギリギリ日本の生活者にも広く理解してもらえる英単語+英単語の組み合わせで新しいコンセプトを伝えられるとしたら、これに勝るありがたいものはそうそうありません。

    「シークレットコンサート」「ナイトレース」「スモールラグジュアリー」など、色々な場面でカタカナワードが氾濫する背景です。

    それにしても「ゴースト(おばけ)」というエキゾチックなワーディングは、やはりインパクトがあります。(とあえてカタカナワードを多用して書いてみました)

    出前市場からデリバリー市場へのイノベーション

    「ゴーストレストラン」の場合、スマホとアプリによって飛躍的に身近になった出前(この言葉もデリバリーとかケータリングと英語にするだけでなぜか新しい事業と感じさせるから不思議です)業界の変化を前提にした、確かに今までは実現できなかったレストラン形態なわけで、新しいコンセプトを新しい言葉で表現することは当たり前と言えるかもしれません。

    デリバリー市場自体は、近所のお蕎麦屋さん中華屋さんの昔ながらの岡持ちでの出前を考えれば、比較的に狭い生活圏を快適として便利に過ごしてきた日本人にとっては、別に新しいものではないかもしれません。ましてコロナ禍で強いられた在宅率の高さは間違いなくデリバリーサービスを生活に取り入れる人を増やしました。実際に、すでに日本のデリバリー市場は5000億円を超えたとみられ、まだまだ成長すると考えられています。

    スマホとアプリによるイノベーション

    イノベーションはUberEatsを代表にスマホと専用アプリによるデリバリースタッフへの依頼マッチングの仕組、そして生活者からのオーダープラットフォームによってもたらされました。

    昔はお蕎麦屋さんやお寿司屋さんの大将、若い衆が調理とのマルチタスクで担っていた出前業務を切り離したのです。これによって、厨房、料理人、食材、レシピは持っているけれど生活者にお届けするスタッフを持たないレストランも、デリバリーが可能になったわけですから大変なことです。極端に言えば、従来まったくありえなかった倉庫街でさえレストランを開業できるようになったのです。

    という中での、ローソン「ゴーストレストラン」参入です。

    歴史的にコンビニは何度も地域デリバリーにチャレンジしてきましたが、必ずしも広く定着したとは言えなかったように思います。やはりそこには、配達スタッフ確保の問題や、生活者が必ずしもオーダーに慣れていないという課題があったように思います。

    今回はUberEatsなどのアプリを通じて注文を想定しているとのことなので、まさに拡大するデリバリーサービス業態の力を借りながらのチャレンジです。

    そもそも、コンビニにとってのアドバンテージは厨房をすでに持っているお店がかなりの数あることです。従来よりローソンなど各社は、バックヤードの面積に多少の余裕があるお店への厨房設備設置に注力し、出来立てのお弁当を提供することに力を入れてきました。

    ローソンで言えば「まちかど厨房」。出来立てお弁当の味は、どんなに加工食品や冷凍食品が進化した今でも、誰が食べても一味も二味も違うと感じることに間違いはありません。ゆえにコンビニユーザーにとってうれしいサービスであり、経営者であるコンビニフランチャイズオーナーにとっても、大変だけれど付加価値アップを図れる商材という価値があります。

    ローソンでは全国約1万5千店舗のうち約8千店舗にすでに厨房設備が備わっていると言いますから、確かに生かさない手はありません。しかも大手コンビニの管理ノウハウと信頼感は、一部衛生面に対する不安感を持たれがちな「ゴーストレストラン」事業に対してのアピールになり得ます。


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