利上げに動けぬ日銀 口先介入も円売り加速

    20日の外国為替市場で円相場が一時1ドル=129円台に下落した。円安抑制に動けない日本銀行の足元を投機筋に見透かされているためだ。急激な為替変動の悪影響を意識しながらも、景気の腰折れと政府の利払い費増加を招く金利上昇は認められない。利回りを指定して国債を無制限で買い入れる「指し値オペ」で金利を抑え込めば、日米の金利差拡大で円安はさらに進みかねず、ジレンマが日銀を苦しめる。

    1ドル=129円台をつけた円相場を示すモニター=20日午前、東京・東新橋の外為どっとコム
    1ドル=129円台をつけた円相場を示すモニター=20日午前、東京・東新橋の外為どっとコム

    「マイナスに作用することも考慮する必要がある」

    日銀の黒田東彦総裁は今週に入って、こうした円安の負の側面を認める方向に転じ、「悪い円安」(鈴木俊一財務相)と懸念を示す政府とともに〝口先介入〟を繰り返している。だが、市場では当局の発言が円安抑制に有効な手段を持たない焦りの裏返しと受け止められ、円売りが加速した。

    円安が進む最大の原因は米欧がインフレ退治で政策金利の引き上げを進めることによる金利差の拡大だ。日銀も金融引き締めに踏み切れば潮目は変わる。長期金利が防衛ラインと定めた0・250%より上昇するのを黙認するだけでも、円安を抑制する効果がある。

    ただ、日本は米欧に比べ新型コロナウイルス禍からの景気回復が遅れる。金利上昇を放置すれば住宅の購入や設備投資の借入金利が上がり、経済活動のさらなる停滞につながる懸念がある。また、国債の元利払いに充てる国債費は金利が1%上昇すれば3・7兆円上振れするとされ、財政のさらなる悪化に結び付く。

    動けぬ日銀を試すかのように20日の国債市場では10年債が売られ、利回りは上昇(債券価格は下落)して0・250%に到達した。日銀は防衛ラインを示すため3月に続いて複数日にわたって実施する「連続指し値オペ」に踏み切るが、金利を力ずくで抑え込んだことで金利差が広がり、さらなる円安を招く悪循環だ。

    足元の円安基調は、米国のインフレが頭打ちとなり金融引き締めが緩むまで、あと半年程度は続くとの見方が強い。円相場は節目の130円を超えても下落を続けると指摘されており、日銀の苦悩は深まる。

    (高久清史)


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