キュートなルックスがファンの心を掴んで離さない「フィアット500」に、純粋な電気自動車(BEV)が加わった。電気モーターとエンジンを組み合わせたハイブリッドではなくBEV、つまりバッテリー・エレクトリック・ヴィークルなのである。
その名も「フィアット500(チンクエチェント)e」。となれば、近距離移動を主体としたシティコミューターを想像するところだ。バッテリーは質量が嵩む。幅を取る。ガソリンエンジンよりも搭載位置に自由度があるとはいえ、前か後ろか床下か…。意外に室内スペースに侵食してくるのである。コンパクトなモデルに大容量バッテリーを積むことはスペース的に難しく、したがって航続可能距離は短くなる傾向にある。
335キロに及ぶ航続可能距離
そもそも、フィアット500は小さなボディを生かして、街中の小道をチョコチョコと駆け回るところに存在意義がある。イタリアの路地裏やポルトガルの商店街などでよく見かけるのがその証拠だ。路上駐車の場所どりで、その小さなボディは有利である。長距離移動よりも、近所の買い物や駅との往復が本来の使い方のように思う。
だが、フィアット500eの航続距離は短くない。
搭載するリチウムイオンバッテリーは42kWhであり、床下に搭載される。パワートレーンは最高出力87kw、最大トルク220Nmを発揮。航続可能距離は公的機関のWLTCモードで335キロに達するというのだ。EVの後続可能距離は、季節や気候や使われ方で大きく左右される。数値どおりに走り切れるとは限らないのだが、“脚の長さ”は日産の「リーフ」以上だと想像する。せいぜいが100キロ前後だとしていた予想を大幅に上回ってみせたのだ。
初の軽カーBEV、三菱の「i-MiEV」(アイミーブ)は16kWhのバッテリーであり、航続可能距離は約100キロ。時代が異なるとはいえ、シティコミューターに割り切っていることと対照的なのだ。