幸いにも日本銀行の黒田総裁は、ワイドショー的な「悪い円安」=「悪い金融緩和」には否定的な見解だ。もちろん急激な円安に対して言葉では、警戒が必要だ、とは言っているが、それを防ぐために金融緩和を手仕舞いするなどとは言ってはいない。むしろ最近でも日本銀行は積極的な長期国債の買いオペをして、緩和姿勢にブレがないことを示している。日本の雇用の低迷など経済状況をみれば当たり前な経済対策だ。
日本が経済停滞を前に金融緩和をし、米国が経済過熱を前に金融引き締めをする。当然に金利格差など政策スタンスの違いがマネーの動きを左右する。さらに、エネルギー価格の上昇による輸入代金のドル建ての支払いも、円安ドル高に貢献する。
国際通貨基金(IMF)の高官は、円安の動きをこれらの点から「経済の実情」に沿った動きとしている。これまた当たり前で、「悪い円安」=「悪い金融緩和」を否定するものだ。
言うまでもなくエネルギー価格の上昇は、われわれの家計を圧迫する。電気代、ガス代や、またガソリン代の高騰が問題だ。一部の食料品も上昇している。これらの家計の負担を軽減する財政政策が重要だ。望ましいのは、消費減税だろう。消費増加につながることで、景気刺激にもなり、雇用・経済の回復につながる。
もちろん所得減税や公共事業増も政策オプションとしてはある。与党では、消費減税をやる勇気のない国会議員が圧倒多数であり、財務省に気を遣う岸田首相も消費減税を否定している。消費税がまるで不可侵領域になってしまっている。実に愚かな発想だ。財務省や官僚に忖度(そんたく)する総理大臣というのも驚くべき存在だ。
例えば、1年や2年を区切って、5%程度消費税を減税する法案ぐらい通せなくて、なんで国会議員や大臣をやっているのだろうか。
岸田首相は財務官僚が仕事のしやすい環境(=緊縮財政)を整えることに関心があるようだが、いま望まれているのは、国民が安心して生活できる経済を再生することだ。この基本を忘れた“財務省管理内閣”には期待できるものが乏しいだろう。