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日本発の半導体技術が医療に革新 CTの放射線量を100分の1に

日本発の半導体の製造技術が放射線医療に革新をもたらそうとしている。世界の注目を集めているのは、コンピューター断層撮影(CT)で照射されるX線の放射線量を従来の100分の1に抑えることができる技術で、沖縄県うるま市に本社と製造拠点を置く「アクロラド」が長年の努力の末に量産に成功したセンサー半導体が中核を担う。4月中旬にはドイツの名門企業シーメンスがアクロラドの技術で開発した、世界初の実用化製品が横浜市内でお披露目された。医療行為に際しての被曝(ひばく)の低減は国際的な課題となっており、日本の医療機関でも努力が続けられている。将来的な普及が期待される最先端CT装置の実現で、粘り強い技術開発の重要性が改めて示された形だ。

日本発の半導体製造技術が生かされたシーメンスヘルスケアのフォトンカウンティングCT「ネオトムアルファ」で撮影した頭部の血管の画像(同社提供)
日本発の半導体製造技術が生かされたシーメンスヘルスケアのフォトンカウンティングCT「ネオトムアルファ」で撮影した頭部の血管の画像(同社提供)

■X線の強さをダイレクトに検出

「実はフォトンカウンティングCTのコアテクノロジーには日本企業の最先端技術が入っています」。横浜市のパシフィコ横浜で開かれた今年の国際医用画像総合展(ITEM)初日の4月15日、シーメンスヘルスケアの早川護CT事業部長は、同社の最先端CTが「日本発」の技術に裏付けられていると強調した。

フォトンカウンティングCTとは、照射されたX線の強さに応じて電気信号を発する半導体を使うことで、より効率的に人体などの断面画像を合成することができる医療装置。通常のCTはX線を受けると可視光を発する物質を使い、その光の強さでX線の強さを検知しているが、フォトンカウンティングCTでは、X線の強さを可視光に変換することなく測定できるために無駄がなく、X線の照射量が少なくても詳細な画像を得ることができる。

同社が世界で初めてフォトンカウンティングの実用化に成功したCT装置「NAEOTOM Alpha(ネオトムアルファ)」の場合、副鼻腔のCT検査で必要となる放射線量は0.0063mSV(ミリシーベルト)で日本の自然放射線量の1日分程度。一般的なCT検査だと0.2~0.8mSVが必要だといい、シーメンスヘルスケアは新技術の放射線量は従来の「約100分の1程度」に抑えられるとしている。

この技術のカギを握る半導体を生産しているのがアクロラドだ。X線照射で電気信号を発する半導体、カドミウムテルライド(CdTe)の量産に成功し、世界初のフォトンカウンティングCTの実用化に貢献した。アクロラドの乾航氏は「カドミウムテルライドは常温でも効率的に電気信号を発する性質がある。このこと自体は教科書に載っているレベルの知見だが、量産技術は長らく確立されてこなかった」と説明する。

■安全で有効な放射線医療

フォトンカウンティングCTが脚光を浴びる背景には、医療被曝問題に対する関心の高まりがある。CT検査などで体内の異常を発見したり、病巣の位置を特定したりすることは医療行為に不可欠である一方、長期にわたる治療でX線を繰り返し浴びることが、健康に悪影響を与える不安はぬぐい切れていない。

このため国際放射線防護委員会(ICRP)は放射線を浴びる程度について、「合理的に達成できる限り低く」するとの理念を提示。1996年の勧告では、医療行為における放射線量に上限を定めることは否定しつつ、患者にとって最適な放射線量の目安を示した「診断参考レベル(DRL)」を策定するよう促している。その後、欧米からDRL策定の動きが広がった。

これに対して、日本では放射線医療の必要性に力点がおかれ、医療被曝問題への取り組みは欧米に後れを取っていると指摘されてきた。ただ、2011年の東京電力福島第1原子力発電所事故で放射線への関心が高まり、放射線を扱う医療行為に関係する学会などで作る「医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)」が2015年に日本初のDRLを策定。2020年には改訂版を発表した。J-RIMEは現状について、「人々が安全で有効な放射線医療を享受できるように放射線防護の取り組みが極めて重要であると国内外で認識されるようになった」としている。


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