「無限列車」のモデルとなったSLも健在! “遺産”である鉄道車両をいかに保存するか

    大阪市浪速区・阿倍野区と堺市を結ぶ阪堺電気軌道は4月29日から5月5日までのゴールデンウィーク期間中、国内現役最古の鉄道車両である「モ161号」を通常運行すると発表した。

    クラウドファンディングを通じて修繕費を集めた昭和3年製電車「モ161号」=令和3年6月15日大阪市住吉区の阪堺電気軌道(藤谷茂樹撮影)
    クラウドファンディングを通じて修繕費を集めた昭和3年製電車「モ161号」=令和3年6月15日大阪市住吉区の阪堺電気軌道(藤谷茂樹撮影)

    国内現役最古の鉄道車両「モ161号」

    1928年に製造され、長らく現役として走り続けてきたモ161形は、2011年の阪堺線開業100周年記念事業で昭和40年代の姿に復原され、大規模修繕を行った。主に貸し切り列車として運行されてきたが、鋼鉄と木材を組み合わせた半鋼製車であるため腐食が激しく、再び大規模修繕が必要になった。

    しかし、コロナ禍で業績が悪化し、費用の捻出は困難に。そこで昨年3月、大手クラウドファンディングサイト「READYFOR」で木製扉や窓枠、外板の腐食を修繕する費用748万円の支援を呼びかけたところ、3カ月弱で目標の倍近い1398万7000円が集まった。

    目標を上回った支援は、窓や水切り(屋根と側壁の境界部)、空気圧縮機の整備、修繕に充てるとしており、阪堺は「今後もモ161号は百寿、更にその先までも走り続けます」との決意を示している。

    現代の鉄道車両はほとんどがステンレスかアルミ製だが、30~40年前まで主流だった鋼製車は定期的に錆を落として塗装する必要があった。さらに古い車両はモ161号のように、一部に木材を使用しており、鋼鉄以上に腐食が問題となる。こうした旧型車は車体を維持するだけでも大変であり、ましてや現役として使い続けるためには莫大な費用と労力を費やす必要がある。経営が苦しい中でも維持を決めた事業者と、その支援者には敬意を表したい。

    実は少し前まで「国内現役最古」の呼称は別の車両に贈られていた。高松琴平電気鉄道(ことでん)では2020年に1925年製の20形電車「23号」が引退。昨年は1000形電車「120号」と3000形電車「300号」が引退し、大正生まれの電車が営業線から姿を消した。ただ「120号」「300号」は当面の間、車両基地で作業用車両として使われる予定だ。

    営業運転しない車両まで含めると、広島電鉄の保存車両である150形「156号」も1925年製だ。原爆で中破した「被爆電車」としても知られるこの車両は、2020年11月に33年ぶりの復活運行を行った。

    このように営業列車としては用いられないが、走行可能な状態を維持する保存形式を「動態保存」と呼ぶ。電気機関車は1922年製の銚子電鉄「デキ3」、1924年製の上信電鉄「デキ1形」、1926年製の弘南鉄道「ED221」など大正生まれの動態保存車が生き延びている。


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