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大手携帯キャリアが注目する「スマホメタバース」とは

2021年、アメリカのFacebookが社名をMetaに変更したのは、記憶に新しい。新たなバーチャル体験として、海外で急速に普及しているのが、同社も注力している「メタバース」である。

これは、英語の「超(meta)と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語で、自分のアバター(分身)が様々な体験をするオンライン空間の総称を指す。

世界中で注目を集めるメタバースだが、アメリカではZ世代(25歳以下)の娯楽として盛り上がる事例が出てきている。2006年にリリースされたRoblox(ロブロックス)というゲームプラットフォームは、5000万本以上のゲームが楽しめるとあって、月間ユーザーが1億5000万人を超すほどの成長を遂げている。米国の小学生の間では、放課後はRobloxで友達と遊ぶことが一般的になりつつあるという。

メタバースは日本でも少しずつ知名度を高めているが、普及には課題が残されている。体験するにはVRヘッドセットが必要なケースが多く、これが数万円とやや高額なのだ。さらに装着すると重い、疲れるという声も多く聞かれる。

そこで着目されたのが、スマホである。

スマホなら誰でも持っており、手軽に楽しめるため、スマホ版メタバースが急速に伸びている。特に伸びているのが、ゲームとライブ配信を融合した「ライブゲーミング」。なぜ人気を集めているのか、日本最大のスマホゲーム配信サービス、Mirrativ(ミラティブ)に取材を行った。

40代、50代のユーザーもアプリを楽しんでいる

「ライブゲーミングは、実況中のゲームに視聴者が介入する新しいゲームのスタイルです。具体的には視聴者はゲーム配信に対してコメントを送ったり、アイテムをギフトできたりするだけでなく、一緒にゲームを楽しめるゲーム体験です。現在、Mirrativでは360万人以上の方がゲーム実況を配信しており、日本最大規模を誇っています」(株式会社ミラティブ代表取締役・赤川隼一さん、以下同)

中心となるのはZ世代だが、40代、50代のユーザーもアプリを楽しんでいる。この層は、若い頃からファミコンやゲーム&ウォッチなどに慣れ親しんでいるので、ゲームとの親和性が高いのが理由だという。

「Mirrativは、スマホ1台あれば誰でも始めることができます。アプリ内に『エモモ(エモーショナル・モデリング)』というアバターを用意しており、素顔を出さず、好きなアバターになって楽しめるため、心理的に始めやすいのが特徴のひとつです。ゲームの種類は様々ですが、皆さん、配信を通して友だちを作り、コミュニケーションを図っています。そこが魅力だと感じているようです。友達の家に集まってゲームを楽しんでいるような世界観を目指しており、Mirrativはゲームを軸につながる新しい居場所と位置づけています」

昨年、音声SNSのClubhouseがブームになったが、思ったほど伸びなかった。その理由を赤川さんはこう分析する。

「会話だけだと飽きてしまうからです。しかし、ゲームというツールがあると、無言でも場が成立しますし、起きたイベントにあわせておしゃべりが弾みますし、参加者との交流にもつながります。日本で今後メタバースが普及するためには、ゲームが重要なカギになると考えています」

Mirrativでは、ライブゲーミングは視聴者がただ見るだけの従来のゲーム配信とは異なり、自分もゲームに参加することで、ユーザー同士のコミュニケーションが活性化、友達ができ、結果居場所が作りやすくなると考えている。

現在は次のソーシャルゲームに続くようなヒットタイトルの開発を目指し、外部の開発パートナーと連携を強めているが、既に月商5000万円を記録した人気ゲームもある。

「2021年にリリースした「エモモバトルドロップ」というアクションレース型のライブゲームがあります。配信者は、視聴者と4人でチームを組んで他チームと対戦します。武器や特殊能力を使って相手のプレイヤーをレース場から落としていき、最後まで生き残ったチームが勝者となる仕組みです。単体ゲームとして約5,000万円の収益を上げるヒット作になりました」

「ウマ娘」の大ヒットも記憶に新しいソーシャルゲームは「大作化」が進んでおり、開発費が高騰している状態だ。特に中国資本が莫大な投資をしており、この勢いは止まらないと予想されている。そんな中、「エモモバトルドロップ」は10人未満の小チームが開発したもので、開発費の高騰が続くスマホゲーム業界の現況とは異なる形での成功事例となっている。

今後どのように市場に切り込んでいくか

急速に拡大するゲーム業界。Meta(旧Facebook)がゲーム業界に1兆円を投資したことが話題になったが、ゲームは、テレビなどの映像業界を追い抜き、今や世界全体で20兆円規模の市場に成長している。日本は2兆円市場だが、その内1.2兆円を占めているのが、スマホゲームである。

ちなみに、YouTube再生回数の15%もゲーム実況である。YouTubeは、今や億単位を稼ぐ配信者がいるが、Mirrativでも配信で生活できるだけの収入を得ているユーザーが増えている。

「ユーザーは気に入った配信に様々な有料アイテムやプレゼントを贈ります。その収益の一部を還元しているので、人気の高い配信者になれば、Mirrativの収入だけで生活できるわけです」

このように売上げの一部を、配信者に還元しており、世界のゲーム市場では次のトレンドと目されている「PLAY TO EARN」(ゲームをすることが収入につながる)の仕組みが結果的に構築されている。

こういった状況を商機と捉えた携帯大手キャリアも、ライブゲーミングやメタバースに熱い視線を送っており、出資が相次いでいる。ドコモは、日本の「HIKKY」に65億円を出資した。同社は世界最大のバーチャル展示会をメタバースで行うスタートアップだ。ソフトバンクは、「ZEPETO」というメタバース関連企業に170億円を出資。KDDIも同様に多額の出資をしている状態だ。

これから拡大していくことは間違いないスマホ版のメタバース。日本が今後、どのように市場に切り込んでいくか、注視をしていきたい。

(吉田由紀子/5時から作家塾®)




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