これはあり得ない!大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の疑問点を検証する

(Getty Images)※画像はイメージです
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大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が大ブレイクしている。三谷幸喜さん脚本の作品は、若者に大ウケである。時代劇が衰退する昨今、非常に喜ばしいことだ。

ところで、大河ドラマに限らず、時代劇はある程度の史実を下敷きにして、あとは脚本家の想像力と創造力でおもしろい作品を作るのが基本である。

たとえば、創作した人物を登場させたりするとかも、一つの方法である。あるいは、史料がないところを想像で埋めるという作業も必要になろう。

大河ドラマがフィクションであることは自明のことであり、史実を詮索するのは野暮なことかもしれない。しかし、「鎌倉殿の13人」にいくつか気になった点があったので、実際はどうだったのか考えることにしよう。

なお、あらかじめ申し上げておくと、この時代の史料は非常に乏しく、研究の際は『吾妻鏡』、『平家物語』などの二次史料(後世の編纂物や文学作品)に拠らざるを得ない。

それらの史料には妥当と思われることが書いてあることもあるが、疑問と考えざるを得ない点もある。そのような制約があることをあらかじめ申し述べておきたい。

1.八重は本当に北条義時と結ばれたのか?

八重は伊東祐親の娘である(生没年不詳)。流人時代の源頼朝は、八重と結ばれたといわれている。源頼朝の流人時代の生活は、後世に成った二次史料にだけにしか記されておらず、不審な点が少なからずある。

伊豆に流された頼朝は、祐親の娘・八重と恋仲になり結ばれ、その間に誕生したのが千鶴丸である。千鶴丸が3歳になった頃、京都での大番役を終えた祐親は激怒した。ことの次第が平氏に露見すると、自らの立場が悪くなるからだ。

そこで、祐親は千鶴丸の殺害を家人に命じた。家人は千鶴丸を柴漬けにして、轟ヶ淵で殺害したと伝わっている。柴漬けとは、体に柴を巻いて縛り付け、さらに重りをつけて水に沈める処刑の方法である。

その後、八重はどうなったのか不明であるが、相馬師常と結ばれたという説がある。八重は一次史料にあらわれないので、実在したのかさえ疑わしい。

大河ドラマで北条義時が八重に求婚したという場面を描かせたのには、もちろん理由がある。推論とは断りながらも、八重が頼朝の御所に勤めていたこと、北条義時と再婚して泰時を産んだとの説が提示されている。

しかし、この説には史料的な裏付けがないという問題があるうえに、首肯できない点が多々ある。そもそも八重の実在そのものが疑わしいが、仮に実在したとしても、頼朝に楯突いた伊東祐親の娘である。そんな事情があるのに、二人は再婚できたのだろうか。

八重が義時と結ばれたというのはかなりの無理筋であるが、ドラマの引き立て役として欠かせないということであろう。

2.善児は完全に架空の人物

梶原善さん演じる善児が登場すると、一気に盛り上がるようだ。源頼朝と八重の間に誕生した千鶴丸を殺した善児。北条宗時と工藤茂光も謀殺した善児。伊東祐親も殺害した善児。非常に不気味であるが、いったい何者なのだろうか。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」には善児の解説があり、「伊東祐親に仕える下人。祐親から信頼され、与えられた役割を淡々とやり遂げていく不気味な仕事人」と書かれているだけだ。ますます謎が深まる。

結論を端的に言うと、善児は実在したのではなく、架空の人物だった。とはいえ、それで終わらせるのはもったいないので、いろいろと考えてみよう。

そもそも下人とは、言葉から類推できるように、「身分が低い者」の総称である。善児は人殺しをしていたが、下人ならば武士身分でないのはたしかだ。ここに大きな矛盾が見られる。

鎌倉時代になると、下人は奴隷身分を示す意味を持つようになった。奴隷は特定の主人に従属していたので、相続や売買の対象になった。しかし、これはおおむね鎌倉時代以降のことなので、善児は伊東家の奴隷ではないだろう。

武士の従者をあらわす言葉としては、郎等、従類がある。下人は郎等、従類より身分が低く、せいぜい伊東家の使用人というイメージが残る。もし、善児がヒットマンのような立場ならば、郎等、従類の方が適切かもしれない。

善児もまた、以後のドラマで随所に活躍するのだろう。おそらくであるが、落馬して死んだとされる頼朝を善児が暗殺するとか、頼家、実朝の二人を善児が暗殺するとか、そういう風に描かれるのではないだろうか。

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