アプリストアの決済手数料を巡る問題が注目されるようになったのは、米国の大手ゲームメーカー、エピック・ゲームズが2020年に起こしたある行動がきっかけでもあった。それは決済手数料に長年不満を抱いていた同社が、人気ゲーム「フォートナイト」のスマートフォン版にあえてアプリストアの規約を犯し、独自の決済システムを導入したことである。
その後フォートナイトは規約違反によってアプリストアから削除されたのだが、同社は削除されたタイミングでアップルに訴訟を提起。加えて動画CMやゲーム内のキャンペーンなどで、フォートナイトのプレーヤーに決済手数料の問題を訴えるという手段に打って出たのだ。
この動きをきっかけとして決済手数料の問題は大きな注目を集めるようになり、2社のOS寡占に懸念を示してきた各国の政府も、より具体的な動きに踏み込むようになってきた。世界的な大手企業が人気ゲームの利用者と売上を犠牲にして世に訴えるくらいの行動を取らなければ、アップルとグーグルは2社は決済手数料などの見直しに動こうとすらしなかった訳で、それくらい寡占が深刻な状況を生み出していることは間違いない。
一連の動きによって、政府などからも問題視されるようになったことを受け、2社はここ最近は決済手数料、そして決済手段に関するさまざまな見直しを打ち出している。実際にアップルは2021年より、小規模のアプリ開発者の決済手数料を半額の15%にするプログラムを開始したほか、App Store以外の決済手段を顧客に伝えることを認めたり、動画や電子書籍などを閲覧する「リーダー」アプリには自社Webサイトへのリンク設置を認めたりするなどの措置も打ち出している。
より踏み込んだ措置を打ち出しているのがグーグルだ。同社は2022年後半よりGoogle Playの決済システムだけでなく、アプリ開発者独自の決済システムを選択できる仕組みを提供するとしており、その第1弾として音楽配信サービス「スポティファイ」に独自の決済システムが導入される予定だという。
姿を消した第3のOS
ただ、それでも2社の寡占による優位性が大きく変わっていないことから、国によってはより強い措置を打ち出すケースも出てきている。韓国では2021年に、アプリストアが提供する決済システムの利用を義務付けることを禁止する法改正がなされており、2社も韓国においては他社の決済システムを導入できる仕組みの導入を余儀なくされている。