しかし、スマートフォンのOSが2社の寡占に至ったのは、企業間の競争と消費者の選択の結果であることも忘れてはならない。スマートフォンのOSは以前、iOSとAndroid以外にもいくつかの企業や団体が開発や提供が進められていたことがあり、米マイクロソフトの「Windows Phone」や、Webブラウザ「Firefox」で知られるモジラ・ファウンデーションの「Firefox OS」、カナダのブラックベリーの「BlackBerry OS」などは日本でも搭載機種が販売されたことがある。
だがiOSとAndroidが市場で大きなシェアを獲得し、開発者の支持を得てアプリによるエコシステムの構築に成功したことから、他のOSは市場に浸透できず姿を消してしまった。現在でもファーウェイ・テクノロジーズの「Harmony OS」など、独自のスマートフォンOSを提供する動きは見られるものの、やはり大きなシェアの獲得には至っていない。
そして現在、OSの寡占による問題に声を上げているのは消費者ではない。寡占が競争上大きな問題をもたらしていることは確かだが、寡占が消費者にとって不利益となっておらず、むしろ支持を得ている部分も多いことも忘れてはならないだろう。
例えばアップルは、App Store以外でのアプリ配信を認めない理由としてセキュリティーの問題を挙げている。アプリの配信を1箇所に絞ることで不正アプリをダウンロードできる余地をなくし、なおかつ配信前にアプリの審査をすることで、高いセキュリティーを保ち消費者が安心してアプリを利用できる環境を提供しているともいえる訳だ。
それだけに政府がOSの寡占にメスを入れるのであれば、いかに消費者の支持を得るかが重要になってくるように思う。エピック・ゲームズのように過激な手法を取ることは考えにくいだろうが、寡占が消費者にどのような問題をもたらしており、その解消と競争の促進が寡占以上のメリットをもたらすことを、何らかの形で消費者に分かりやすく伝える取り組みが必要とされているのではないだろうか。