こんにちは、桶井道(おけいどん)です。連載12回目、今回は、「セル・イン・メイが本当に儲かるのか、ほったらかし投資との比較」について書きます。
株式相場の格言で「セル・イン・メイ」という言葉を聞いたことがあると思います。「株は5月に売れ」ということです。本当に5月に株を売ることが最適解なのでしょうか? データに基づいて検証します。
その前に、「セル・イン・メイ」には続きがあることをご存知でしょうか? 短縮せずに英語ですべてを書きますと「Sell in May and go away , don’t come back until St.Leger Day.」です。これを翻訳すると「株は5月に売れ。そして市場から去れ。セント・レジャー・デイまで戻ってくるな」となります。
セント・レジャー・デイというのは、英国で有名な競馬レースがある9月の第2土曜日にあたります。つまり、「株は5月に売って、株取引をお休みして、9月の第2土曜日まで戻ってくるな」ということです。
そこで、9月に株を買って翌年5月に売るのが優位なのか、それとも「ほったらかし投資」が優位なのか、NYダウの株価にて検証してみます。
この表には、左側から順に、「NYダウの9月終値」、「翌年4月終値」、「翌年9月終値」、「9月終値で買って5月に売った場合のリターン(株価データは4月終値使用。以下同様)」、「5月に買って9月終値で売った場合のリターン」、「1年間ほったらかしのリタ―ン」を表示しています。
はじめに、1年間のリターン(図、右端の列)から見ますと、2014~2015年シーズン以外はすべてプラス成長です。それも20%成長が3度、10%成長が4度もあり、米国株の強さが分かりますね。
次に、「セル・イン・メイ」(図、右から3列目)、つまり、「9月終値で買って、翌年4月終値で売った場合」はどうでしょうか。2019~2020年シーズン以外はすべてプラス成長です。2020年春はコロナショックだったので例外ですね。確かに強いということが分かります。
対して、「セル・イン・メイの逆」(図、右から2列目)、つまり、「4月終値で買って、9月終値で売った場合」はどうでしょうか?明らかにマイナスは2015年シーズンのみ。2021年シーズンは99.91%ですが、これは誤差ですね。
「セル・イン・メイ」と「セル・イン・メイの逆」を比較すれば、確かにリターンは前者の方が優れています。とはいえ、後者も多くがプラス成長なのです。
この期間(=セル・イン・メイの逆の期間)に株式投資以外の投資によって、これ以上のリターンが得られるのならば、いったんお休みも選択肢になるでしょう。が、そんなものがあるでしょうか? 不動産投資(現物)するには期間が短く、債券投資や定期預金ではリターンが低く、FXや仮想通貨ではリスクが高すぎます。
これら結果を踏まえて、私が導いた結論は、「ほったらかし投資」が優位だということです。「セル・イン・メイ」が「ほったらかし投資」より儲かるというのはこの10年間で2015年と2021年の2度だけ、それも2021年は誤差です。よって、「セル・イン・メイ」が明らかに優位であるのは2015年の一度だけということになります。
1年間のリターン(図、右端の列)を見れば、米国株がいかにしっかりと成長し続けているかが分かるのです。格言のように売ったり、買ったりしなくても、結果が出せることはデータが物語っていますね。
個人投資家は、「ほったらかし投資」が最適解だと、私は思います。もちろん、私もそうします。
このコラムでは、株式投資に関して記述しましたが、あらゆる意思決定、最終判断はご自身の責任において行われますようお願い致します。ご自身の資産運用等において、損害が発生した場合、筆者は一切責任を負いません。ご了承ください。