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現代アート市場が活況 ウクライナ情勢も影響

従来の概念にとらわれない新しい芸術表現を作品にした「現代アート」の市場が国内で活発化している。世界的な金融緩和によるカネ余りや、ウクライナ情勢の緊迫化で実物資産が好まれるようになっていることも背景に、若い富裕層を中心に購入希望者が増加。百貨店も販売を強化している。購入額の何倍にも値上がりするケースがあることから投資対象としてみる向きもあるが、「心を豊かにする」という本来のアートの価値から離れた動きが加速することに懸念も出ている。

ハードル低い百貨店

米ポップアート界の巨匠、アンディ・ウォーホルによるマリリン・モンローのオフセットは275万円、大阪府出身の彫刻家、名和晃平さんのシルクスクリーンは165万円、路上芸術家バンクシーの作品価格は非公表-。

大丸心斎橋店(大阪市中央区)が今年1月に開いた現代アートの展示即売イベント「ART SHINSAIBASHI」。同店の同様のイベントでは過去最大規模だったといい、世界的に知られる大物アーティストから気鋭の若手らの作品約300点をそろえ、多くの来場者を集めた。

大丸で30年以上、美術売り場を担当する阪東広文氏は「心斎橋店では美術品の売り上げのうち、現代アートが約6割を占めるようになった。欧米ではアートを購入することは社会的にステータスが高い行為とされ、世界的に市場は拡大を続けている」と説明する。

一般にアートを購入する場合の入り口は、街中のギャラリーか百貨店の美術品売り場となることが多いとされる。百貨店は初心者にもハードルが低いという強みがあり、各店は近年のアートへの関心の高まりを受けて販売体制を強化。阪急うめだ本店(同市北区)も5月5~9日、「北斎と現代アート」と題した大規模イベントを開催する。

市場規模3510億円

世界のアート市場は絶好調だ。美術品市場調査会社アートプライスによると、現代アートの市場規模は2021年(20年7月~21年6月)は27億ドル(約3510億円)で、00年の1億300万ドル(約134億円)から約20倍に大きく膨らんだ。08年の世界金融危機など市場の熱が冷めた時期もあったが、ほぼ右肩上がりで推移している。

美術品全体の取引に占めるシェアも00年ごろの3%から、21年は23%まで成長。同年にオークションで落札された作品は約10万2千点、取引された作家は約3万4600人でいずれも過去最多だった。活況な市場を後押しするのが、オンライン取引の進展と、ブロックチェーン技術で作品が本物であることを証明する「NFT」を活用したアートの登場だという。

21年のオークションでの売り上げに占める国別の割合は、首位の中国が40%で、米国32%、英国16%と続いた。日本は「その他8%」の中に入り、割合は低い。一般社団法人アート東京によると、国内の現代アートの市場規模は令和2年が373億円、3年が394億円だった。

インフレリスク回避

ただ、近年は衣料品通販大手ZOZOの創業者、前沢友作氏が米国人画家ジャンミシェル・バスキアの絵画を超高額で落札したことが注目されたように、日本人の間でも30~40代の富裕層を中心に現代アートを求める動きが顕著になっているという。

こうした層が関心を高めている理由について、岩井コスモ証券の饗場(あいば)大介シニアアナリストは「富裕層にカネ余りの状況があり、従来の株式以外にもゴールドやゴルフ会員権など実物資産への投資が進んでいる」と指摘。現代アートもそうした動きの一つだとし、「従来の美術品と違って美術館やコレクターなどの所有者が固まっていないものも多く、市場に出やすいこともあり投資が進んでいるのではないか」と話す。

さらに、ロシアによるウクライナ侵攻という有事でもあり、インフレのリスクを避けるため投資マネーが実物資産に向きやすい状況だという。

一方で、大丸の阪東氏によると、購入動機として「投資・運用目的」を挙げているのは全体の2%で、1千万円を超えるような高額商品では8%まで上がるという。ただし、購入の主目的にはなっていないという。

阪東氏は「目で見て、脳で見て、作品が投げかける問いに考えをめぐらせるのが現代アートの本質だ。30年前にはバブル経済で日本人が世界でアートを買い求める動きもあったが『アートバブル』の崩壊も経験している。現代アートは株式などと違って完全に投資に向くものではない」と警鐘を鳴らしている。(井上浩平)


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