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「優柔不断は悪よりも悪い」一歩を踏み出せない人へ、デカルトの背中を押す言葉

PRESIDENT Online

四段階法で考える方法を説く

彼は、一六三七年に『方法序説』をラテン語ではなく、誰もが読めるようにフランス語で書いた。そして、よりよく考えるため、偏見の餌食にならないために四段階で考える方法を説いた。そのシンプルさは実に驚くばかりだ。彼によると良識をもつための思考ステップは四つある。

一つ目は、確実なことから出発すること。最初に出てきたものや表面的な事実に飛びついてはいけない。注意深く考え、慎重に検討したうえで確定した根拠が必要なのだ。つまり、ある程度時間をかけ、一度疑ってみたうえで、それでも確証が揺らがなかったことのみを真理とする。

二つ目は、問題を分解、分析して考えること。複雑な問題に直面したときは、まず複数の単純な問題に分解してみる。たとえばうまくいかなくなってしまった夫婦。実に複雑な問題だ。問題を理解するために、まずは、いくつもの要素に分解してみる。景気、相性の問題、経済的な問題、セックスの問題、将来への計画性などを個別に考えてみるのだ。

三つ目は総合する。分析し、複雑な関係にある個別の要素を見極めたあとで、もう一度全体を俯瞰し、本質をつかむ。夫婦の例に戻るなら、社会的な状況や経済的な問題が原因ではなく、むしろ相性の問題、つまりは二人の性格の不一致によるものだという結論になるかもしれない。

四つ目の作業は、ほかに考慮し忘れた要素がないか確認することだ。夫婦がうまくいかなくなったのは、予定より早く子供ができてしまったせいもあるのではないだろうか、など。

以上、四つの思考ステップを見るかぎり、特別に画期的な要素は感じられない。同様に、デカルトは数学の証明においても、常に二段階の作業が必要だとしている。最初は直観によって、命題が明白であるかを判断し、次に推理する。まずは自分を疑うのだ。現在、考え方の硬直した人が「デカルト的」と称される傾向があるが、こうして見ていくと、デカルトの印象もだいぶ違ってきたのではないだろうか。

デカルトは、なぜ神の存在を証明しようとしたのか

こんな良識あるデカルトが、なぜ、一方ではあれほどまで必死に神の存在を証明しようとしたのだろうか。生涯にわたり、人間の知性の限界を見定めた結果として(もちろん、間違いがないように、基本的な手順を踏み、時間をかけて真理だと証明できるか吟味したうえで限界を確定する)、限界を知らない存在があると示そうとしたのだろうか。

矛盾は単に表面的なものでしかない。デカルトは人間の知性の有限性から神に至ったのだ。より正確に言うなら、人間のなかには無限という概念として、神が存在するというのが彼の出発点だった。無神論者でも、少なくともこの点までは受け入れられるのではないだろうか。私たちは無限である。それは無限という抽象的な概念をもっているからだ。

一方でわれわれの思考は、自分たちがこの世の有限な存在であるという自覚から出発しているとデカルトは言う。われわれは、有限という概念を自分たちが知る有限のもの、自分たちの有限の知性に基づいて構築している。だから、人間が自分たちだけで考えるかぎり、無限という概念にはたどりつけない。よって、われわれのもつ無限という概念は、有限の存在を超えたものから与えられたものである。つまり、神は存在する。

存在論的証明と呼ばれる神の証明

これが「存在論的証明」と呼ばれるデカルトによる神の存在の証明であり、アンセルムス〔1033~1109。神学者、哲学者〕の影響を色濃く受けている。アンセルムス自身も著書『プロスロギオン』のなかで、神という概念から演繹法で神の存在を証明している。抽象的な思考の実験という意味で、デカルトは彼の後継者であり、有限な人間が無限という概念をもっているのはなぜか、という単純な発想から出発し、誰にでもわかる段階的な検証を経て、無限の存在である神が必然の存在であることを示そうとした。

もちろん、理性を重んじるデカルトの本質と信仰の折り合いはどうなるのかという問題は残る。『方法序説』であげた最初のステップは「確実なことから出発する」だった。数学的な真理も最初の明証を土台にしている。

だが、そもそも私たちはどうしてそれが明白な証拠だとわかるのだろう。デカルトならこう答える。神が人間に「生得観念」を授けた。そのおかげで私たちは第一確証を認識できるのだと。

だが、もし「生得観念」によって、段階を追い神の存在証明に達するのならば、神のおかげで神の存在を証明することになってしまう。これでは存在証明というより、仮説をもてあそんでいるだけではないだろうか。


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