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投資家の「中国離れ」が止まらない…3期続投のために経済成長を犠牲にする習近平政権の自業自得

PRESIDENT Online

主要投資家の間で強まる「脱中国」の動き

ゼロコロナ政策によって、中国からの資金流出も増加し始めた。足許、人民元の下落が顕著だ。年初から4月半ばまで人民元は米ドルに対して横ばい圏で推移してきた。しかし、4月下旬に差し掛かるあたりから急速に人民元安が進んでいる。ゼロコロナ政策の長期化を懸念し、個人消費や設備投資、港湾施設の稼働率低下による輸出の減少などによって中国経済の成長率が低下傾向を脱することは難しいと考える海外の主要投資家が増えた。

彼らは中国本土の株などを売り、受け取った人民元を売って米ドルなどを手に入れる。人民元売りは国内の投資家の不安心理を掻き立て、命の次に大切なお金を守るために人民元を米ドルなどに替えようとする人が増えている可能性は軽視できない。それに加えて、米欧と中国の金融政策の相違も大きくなっている。人民元の売り圧力は強まりやすい状況が続きそうだ。

これまで以上に相場管理に躍起になっている

その状況下、共産党政権と中国人民銀行(中央銀行)は、資金流出を必死になって食い止めようとしているとみられる。それは、3月まで3カ月続けて外貨準備残高が減少したことが示唆する。

ドル高による資産価額の目減りなどに加えて、中国人民銀行は自国通貨の下落が勢いづかないように人民元を買い支えするなど相場の管理にこれまで以上に神経を尖らせているだろう。それに加えて、共産党政権は中央銀行デジタル通貨(CBDC)である“デジタル人民元”の利用を急いでいる。人民元取引の監視体制は強化されている。

ゼロコロナ政策によって4~6月期の中国のGDP成長率は1~3月期を下回る可能性が高い。7~9月期以降の成長率に関しても楽観できない。景気の先行き懸念が高まる中、中国からの資金流出は増加基調で推移するだろう。そうした展開が現実のものとなった場合、共産党政権はなりふり構わぬ姿勢で資金の流出を食い止めなければならなくなるはずだ。

その取り組みの一環として綱紀粛正が徹底され、これまでにも見られたように有名俳優や民間企業の創業経営者など富裕層への締め付けが強化される展開が予想される。

失業率が上がれば3期続投に黄色信号も

また、ゼロコロナ政策によって中国の失業率は上昇するだろう。大企業の景況感が悪化する状況下、中国の銀行は中小企業への融資に慎重にならざるを得ない。世界的な供給制約の深刻化によって企業の事業運営コストは増える。生き残りをかけて雇用を減らす企業は増えるだろう。

今のところ、習氏の3期続投が危ぶまれる状況には至っていないようだが、ゼロコロナ政策が続くことによって、中国の実体経済はより強く下押しされる。個人消費の減少、不動産市況の悪化、IT先端企業への締め付け強化による株価下落などが鮮明となれば、これまで以上に企業経営者のマインドは悪化し、失業者が増える恐れがある。

その場合、党内からの批判が強まるなど習氏の阻害要因は増えるだろう。秋の党大会で3期続投を目指す習氏にとって、失業率の上昇はなんとしても避けなければならない。共産党政権は政策を総動員して雇用を創出し、経済成長率を押し上げようとするはずだ。金融緩和、減税やインフラ投資の積み増し、不動産規制の緩和など、実施されてきた経済対策は強化されるだろう。

成長率の低下傾向は一段と鮮明化する恐れ

それに加えて、金融市場への介入も強まる可能性が高い。株価下落を食い止めるための一部銘柄の売買停止や、“国家隊”と呼ばれる機関投資家による株式買い支えも増えるだろう。5.5%前後の経済成長率を達成して中国の最高意思決定権者としての長期の地位を確立するために、習政権はなりふり構わぬ姿勢で経済と金融市場への統制を強めるだろう。

しかし、そうした取り組みが中国経済の実力を高めることにつながるとは考えづらい。近年の経済運営を確認すると、習政権は人々の自由かつ多様な発想を認め、成長期待の高い分野に生産要素が再配分される環境を目指すことが難しいように見える。急速な景況感悪化にもかかわらずゼロコロナ政策が続けられていることは、習政権が、党の権能が市場原理に勝るとの考えを強めていることを示唆する。

他方で、不良債権問題は深刻化し、公共事業を増やせば増やすほど、経済全体で資本の効率性は低下するだろう。ゼロコロナ政策によって中国経済の成長率の低下傾向は一段と鮮明化する展開が懸念される。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)

多摩大学特別招聘教授

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。

(多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫)


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