環境配慮 サステナブル腕時計が人気 果物や違法銃器などを再利用

    地球環境に配慮した素材を使った腕時計「サステナブルウオッチ」の人気が高まっている。ペットボトルや海洋ごみ、果物、違法銃器などを素材として部品に再利用し、製造工程で発生する二酸化炭素(CO2)の削減にもつなげている。一般にもSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが広く浸透し、こうした取り組みが消費者の共感を呼んでいる。

    シチズン時計が7月に発売するサステナブルウォッチ「シチズンエル」の新モデル(同社提供)
    シチズン時計が7月に発売するサステナブルウォッチ「シチズンエル」の新モデル(同社提供)
    サステナブルウォッチを展開するシチズン時計の商品企画チーム(同社提供)
    サステナブルウォッチを展開するシチズン時計の商品企画チーム(同社提供)

    「当初はなかなか理解してもらえなかったが、時代が追い付いてきた」。サステナブルウオッチについて、こう語るのはシチズン時計の商品企画担当、前田花菜氏だ。

    シチズンは、平成28年から国内でサステナブルウオッチブランド「CITIZEN L(シチズンエル)」を展開している。「外見だけでなく、内面も美しい時計を提供したい」(前田氏)との思いを込めて、サステナビリティー(持続可能性)を前面に出したブランドを立ち上げた。

    ベルトには、回収されたペットボトルのリサイクル素材やパイナップルの葉を採用。取扱説明書もデジタル化し、これによりCO2排出量で年間20トン、紙では同37トンの削減を見込んでいる。販売を始めた6年前はSDGsという言葉もあまり知られていなかったが、前田氏は「今ではサステナブルがおしゃれで、ポジティブにとらえられるようになった」と話す。

    シチズンはさらに需要を掘り起こそうと、生物学者の福岡伸一氏が監修の下、7月に自然界の生物の姿や構造をものづくりに応用する「バイオミミクリー」の考えを取り入れた4モデルを投入する。文字盤に富士フイルムが開発した特殊インクを採用。光の反射によって発色し、モルフォ蝶やタマムシなどにみられる「構造色」を再現した。前田氏は「命の鼓動を育む地球の情景をデザインに取り入れた」とし、新モデルに期待を寄せる。

    一方、スウェーデンの腕時計ブランド「トリワ」が投入した商品も話題を呼んでいる。同社が展開する「タイムフォーピース」シリーズは、世界で初めて違法銃器を溶かして固めた金属を採用。売り上げの一部を紛争地域の復興に寄付している。海洋ごみを再利用した腕時計なども販売している。

    トリワの国内総代理店、アイ・ネクストジーイー(東京都品川区)の担当者によると、「サステナブルに共感する50、60代が未来を担う孫にプレゼントするケースが目立つ」という。

    時計専門店「TiCTAC(チックタック)」もサステナブルウオッチの特集を企画し、品ぞろえに力を入れている。オリジナルブランド「SPICA(スピカ)」では、元アナウンサーでフラワーアーティストの前田有紀さんと女性向けの腕時計を企画した。

    リンゴの皮などから作られた革「アップルスキン」をベルトに採用。文字盤には本物の花びらを入れた。マーケティング担当の津田亜紀子氏は「アップルスキンの話をすると、お客さまの反応がいい」という。

    国内の時計市場は新型コロナウイルスの影響で販売が苦戦している。日本時計協会によると、コロナの感染拡大前の令和元年の腕時計出荷個数は6620万個だったが、2年は4430万個に減少。3年は5240万個まで回復したが、コロナ前には届いていない。国内ではSDGsに共感する層は着実に増えており、メーカーや販売店からはサステナブルウオッチへの期待が高まっている。(黄金崎元)


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