「悪い円安」で金融緩和を止めれば長期停滞に逆もどりする

高橋洋一教授(嘉悦大学)の最新刊『プーチンショック後の世界と日本』(徳間書店)は、現在のコロナ禍とウクライナ戦争のダブルショックに直面する世界と日本経済の動向を考える上では必読の時論だろう。さらに日本経済では、岸田政権の“令和の検討使”的リスクも合わせて考えるべきだろう。つまり岸田政権の経済危機に対する無策に近い姿勢である。

記者団の取材に応じる岸田文雄首相=9日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)
記者団の取材に応じる岸田文雄首相=9日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)

高橋教授と最近、対談する機会を得た。高橋教授とは2020年に共著で『日本経済再起動』(かや書房)を出して以来の本格的対談になった。興味津々の内容は、月刊『WiLL』に近々掲載予定である。

この対談で話題になったひとつの論点は、現在の「悪い円安」論である。この問題については前回の連載でも書いた。新聞やテレビのワイドショーなどでは、「行き過ぎた円安を止めよ」「円安を止めるためには日銀の金融緩和を停止するのが正しい」などという意見を見かける。

しかしマスコミや一部の識者たちが言うように、「為替レートを目的にして日本銀行が金融政策を変更するのは下策中の下策」というのが、高橋教授や私の強調するところである。ちなみに2人だけの“特殊な”意見ではない。

例をいくつかあげよう。著名な経済学者でもあるローレンス・サマーズ元米財務長官は、最近のテレビ番組で、高インフレに苦しむ米国と低インフレ状況の日本とでは当然に金融政策のあり方が違うと強調し、日本では金融緩和の継続が正しいと語っている。

またフィナンシャル・タイムズの社説(「円安、日銀には物価『2%目標』達成の好機」)はさらに具体的に「悪い円安」=「金融緩和の停止」に手厳しい批判を展開している。同紙の社説では、岸田政権が世論などの圧力で、円安抑制と金融引き締めに転じることを「百害あって一利なしに近い」と断じている。

そもそも「悪い円安」の議論の背景には陳腐な為替レートについての見解がある。現在のような短期での為替レートの変動を正確に論じることができる理論はないことが知られている。しかしマスコミでは、日米の金利差で円安ドル高を説明しているのが一般的だ。あるいは経常収支の赤字転換の可能性でいまの為替レートを論じる人たちもいる。

これらは経済学的には根拠に乏しい。そもそも短期の為替レートは「ランダム・ウォーク」の典型だ。これは為替レートが現在の値からまさにランダムに上下動することを意味する。その正確な予測は困難である。これは堅固な事実である。

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