「日本発(初)」を感じさせる走りとデザイン
実際に走らせると、アリアが明らかに上質なゾーンに踏み込もうとしていることが分かる。まずドアを開けた瞬間に、ジャパニーズモダンの日本建築を思わせる品の良いリビング感を意識させられる。デザイン性にはことさら力を入れたようで、これまでの自動車の常識を否定するかのような上質な雰囲気なのだ。
ドアを開けてインテリアを目にした瞬間、多くの人が「うぉー!」っと感嘆の声をあげる。たとえばセンターコンソールは電動で前後し、和室の障子にあるような組子の内側にはライトが仕込まれている。まさに和風建築を思わせる佇まいなのだ。
機械的な雰囲気を漂わせる物理スイッチは少ない。木目調のパネルの中にひっそりと仕込まれており、クルマが「機械の塊」であることを疑わせる。それでいて、必要な操作系は2枚の12.3インチモニターに格納されている。スマホを操作するように指先一つで、驚くほど無数の情報が得られるのだ。純和風と近代が絶妙なバランスでミックスしているのである。
静粛性も際立っている。そもそもノイズの音源を持たないBEVではあるものの、モーターにも高周波のノイズが響くことがある。それらを抑えているのである。タイヤノイズも低いといえるだろう。静かな茶室のような趣だ。
パワー特性は、あえて強力な感覚を抑えているようだ。電気モーターゆえに、速度ゼロの発進からグイグイと推進させることは可能だろうが、唐突な感覚は薄い。BEVらしい強引な加速が希望ならば、夏頃にデビューするモデルを待つ必要があるのかもしれない。
ともあれ、内燃機関に慣れ親しんだBEVデビューユーザーには受け入れやすいだろう。それが先鋒を任された「B6」の役目なのかもしれない。日本初の高速巡航EVでもあり、日本初の純和風自動車という見方もできる。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。