2019年に携帯電話事業への新規参入を果たした楽天モバイル。当初は基地局整備にかなり苦戦していたものの、その後順調にエリアを拡大して2022年2月時点では4Gの人口カバー率が96.7%に達したほか、契約数も以前MVNO(仮想移動体通信事業者)として提供していたサービスとの合計で550万にまで拡大するなど、順調な伸びを見せているようだ。
だがそれでも楽天モバイルでは、まだ郊外や地方、都市部でも建物の中などで自社回線が入らないケースは多く、ローミングしているKDDIのネットワークでカバーしている場所は少なからずある。大手3社と同じ人口カバー率99.9%を達成し、エリア面で同じ土俵に立つにはまだ至っていないのが現状なのだが、楽天モバイルはその実現のため喉から手が出る程欲しているものがある。それが「プラチナバンド」だ。
プラチナバンドの空きが少ない理由
プラチナバンドは俗に1GHz以下という、携帯電話向けとしては低い周波数の電波を指した言葉。電波は周波数が低いほど障害物の裏に回り込みやすく、遠くに飛びやすい性質があることから、プラチナバンドは広い場所や建物の中など入り組んだ場所もカバーしやすく、少ない基地局で広いエリアをカバーできる重要な存在となっているのだ。
実際、2006年に現在のソフトバンクグループがボーダフォンの日本法人を買収してソフトバンクモバイル(現・ソフトバンク)を設立し、携帯電話事業に参入した際、同社はプラチナバンドの割り当てがなかったことから、プラチナバンドを持つNTTドコモやKDDIとの競争上不利であることを大々的に訴えて大きな話題となった。その結果、同社は2012年にプラチナバンドとなる900MHz帯の免許を獲得するに至っている。
そして楽天モバイルも、新規参入ということもあって現在割り当てられているのは4G向けの1.7GHz帯や5G向けの3.7GHz帯など、プラチナバンドより周波数が高く広範囲をカバーするには不利な帯域の免許のみである。そうしたことから同社も、プラチナバンドの割り当てがないことが競争上不利だとして、その割り当てを経営上の最重要課題と位置付けて総務省などへの訴えかけを強めているのだ。
ただ携帯電話向けに使われているプラチナバンドの周波数は600MHz~1GHzくらいまでと、あまり潤沢とはいえない。しかも使い勝手が良いために、以前から幅広い無線通信に用いられているので空きがほとんどない。それゆえ新たな事業者にこの帯域を割り当てるには、その帯域を使っている事業者に他の周波数帯へと移ってもらう必要があるので、どうしても時間がかかってしまう。
実際、900MHz帯と同じ2021年に免許が割り当てられた700MHz帯は、地上波テレビのデジタル化に伴い空きが出た周波数帯なので、使用すると古いテレビのブースターなどに影響してテレビの映像が乱れてしまうといった問題を抱えていた。そこで現在700MHz帯の免許を持つ大手3社は、免許割り当てから10年近くたった今もなお、ブースター対策を進めながら少しずつ利用できるエリアを広げている状況なのだ。