きらやか銀公的資金注入 日銀政策の弊害も

    きらやか銀行(山形市)などを傘下に持つじもとホールディングス(HD、仙台市)が公的資金注入を申請する方向で検討に入り、政府が新型コロナウイルス禍で注入条件を緩和した特例制度の初適用になる見通し。今春で10年目に入った日本銀行の異次元緩和による超低金利で経営体力が低下し、ウクライナ危機などによる市場混乱が追い打ちをかけた。「悪い円安」につながる金融政策の修正を求める声も強まりそうだ。

    きらやか銀行本店=2010年10月、山形市
    きらやか銀行本店=2010年10月、山形市

    じもとHDは12日、きらやか銀への資金注入を金融庁に申請するとの報道について「検討していることは事実」と発表した。認可されれば、地銀への資金注入は平成26年の豊和銀行(大分市)以来、8年ぶりだ。

    きらやか銀はリーマン・ショック後の21年と、東日本大震災後の24年の2度にわたり計300億円の資金注入を受け、このうち200億円分は令和6年9月に返済期限が迫る。地域経済を担う中小企業を支えるためにも、自己資本の充実が必要だと判断したとみられる。

    地銀の経営環境は、地方の人口減少や超低金利による利ざや(貸出金利と預金金利の差)縮小で厳しい。加えてコロナ禍で打撃を受けた飲食や宿泊など地元の中小企業への貸し出しが多く、政府の資金繰り支援の終了後には自己資本が不足した地銀による貸し渋りや貸しはがしが懸念された。

    このため政府は令和2年6月成立の改正金融機能強化法で、公的資金について通常15年の返済期限を事実上撤廃した上、大震災時の特例と同様に経営責任なども問われないよう条件を緩和し、申請しやすくした。

    ただ、コロナ禍の回復で上向くかにみえた景気は、ウクライナ危機と物価上昇に対応した米連邦準備制度理事会(FRB)の急ピッチな利上げで揺さぶられた。地銀の間では、金利が低い日本国債より収入が見込める米国債などに資金を移す動きが活発化していたが、金利が上れば債券価格は下落するため、こうした外債の評価損が膨らむ。きらやか銀の申請もこの問題が背景にあるとみられる。

    日銀の試算では、米利上げを契機に世界経済が停滞した場合、経営体力が弱い地銀の最終利益は半分以下になるという。日米の金利差拡大による円安進行が物価の上昇を助長し、日銀の超低金利政策に厳しい目が注がれる中、地銀の経営難で地域経済に影響が出れば日銀に対する圧力もさらに強まることが予想される。(田辺裕晶)


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