デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「MorningPitch(モーニングピッチ)」というイベントを東京・大手町で開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげることを狙いとしています。
モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回はAIです。
AIを活用した国内産業の2025年度市場規模は2兆円に迫る
富士キメラ総研によるとAIを活用した産業の国内市場規模は2020年度見込みが1兆1084億円ですが、25年度には1兆9357億円と2兆円に迫る見通しです。金融と公共に次ぎ情報通信、製造分野が全体をけん引するとみられます。
ベンダーの成長も著しいものがあります。アイ・ティ・アール(ITR)の調査によると、AI主要8市場の規模は20年度が513億円でしたが、25年度は約2.3倍の1200億円へと拡大する見通しです。
主要領域のひとつである言語・音声解析については音量や声の高さの識別が可能です。テキスト化は日本語の特性上、なかなか難しかったのですが、着実に技術は向上しています。例えばGoogleアシスタントやAppleSiriに「わたしのなまえは、いそべたかしです。ほんじつはモーニングピッチへさんかしていただきありがとうございます。きょうはみなさまよろしくおねがいします」と丁寧に話しかけた場合、「私の名前はIsobeたかしです。本日はモーニングピッチへ参加頂きありがとうございます。皆様本日はどうぞよろしくお願いいたします」といったように、漢字や句読点も含め人の手で書いたように、高精度の変換が行われるようになりました。
透明パウチで包装した品物も判別
画像認識については、道路の舗装状況など専門技術が必要な領域でも、路面状態の検知が可能です。また、ディープラーニング技術などを融合した画像認識によって、一度に多数の製品を名称に至るまで把握できます。透明もしくはアルミニウムのパウチで包装した品物は、光が表面で反射してカメラが正確にとらえることができないため、目視」での確認作業が必要でしたが、そういった作業も判別できるようになっています。
言語や画像だけではなく、嗅覚認識や予測分析の自動化、予測型意思決定の最適化、データアセットの自動収集といった分野でも技術が進化しています。
目の動きで認知機能を検知
また、IoTセンサーの高性能化や研究範囲の拡大に伴い、AI領域では五感のすべてが解析対象になりつつあります。視覚については、スマートフォンのビデオ機能から得られる人の目の動きの動画情報(目の動き、まばたき率、瞳孔サイズなど)を独自のAIで解析し、認知機能の状態を検知します。
顔の表情については、スマートフォンのビデオ機能から得られる頬上部の動画情報を踏まえ、心拍数や精神的ストレス、呼吸状態などを高精度で測定します。声に関しては100万人を超える声のデータベースを活用。スマートフォンに吹き込んだ声をクラウド上で解析し心臓や呼吸器状態の管理を可能とします。
何百もの異なる臭気や香りの検出が可能に
五感解析の中で技術が急速に進化しているのは「鼻」の領域です。高精度の香り検知を可能にするデバイスとソフトウエアによって、タバコの煙からベンゼンなどの有害な臭気に至るまで、何百もの異なる臭気や香りの検出が可能となりました。五感解析の技術の進化は、健康長寿社会を支える上で重要な役割を果たしています。
今後のAI市場は、データサイエンティストやAIエンジニアが不足している点を背景に、アルゴリズム自体の自動化プラットフォームが伸びてくると予測しています。また、画像や自然言語解析といった解析技術を用いたコモディティ型と防犯カメラ解析やスマートスピーカーなど特定ソリューションへの特化型という二極化が進んでいくとみています。こうした市場動向を踏まえ、今回は5社のベンチャー企業を紹介します。