資源高追い風の好決算 問われるグリーン投資・エネルギー安保への貢献

    原油や資源価格の高騰による物価の上昇が家計を圧迫する一方、令和4年3月期決算では、石油元売り大手3社や大手総合商社の最終利益がいずれも過去最高となる空前の好業績となった。相場変動による業績への追い風は一時的となる可能性もあるが、エネルギー・資源に関わる各社は、稼いだ利益を脱炭素化への投資やエネルギー安定供給の確保につなげていく社会的な責任を果たすことも重要となる。

    出光興産の木藤俊一社長
    出光興産の木藤俊一社長

    ウクライナ危機などによる原油価格急騰で、石油元売り各社は在庫評価益が上積みされた。出光興産は3年3月期は75億円だった在庫評価益が4年3月期では2332億円と30倍以上に膨らんだ。

    同じく好決算が相次いだ総合商社も石炭などの資源事業の権益による利益が相場の高騰で膨らんでいる。

    石油元売り各社は配当を増やしたり、株価の上昇につながる自社株買いを打ち出したりして株主への利益還元を図る一方、人口減に伴う需要減や中長期の脱炭素化を見据えた対応を急いでいる。

    「石油に関しては(将来的に)需要が減る。最重要課題としてカーボンニュートラル(脱炭素化)に挑戦しないといけない」。13日の決算会見でENEOSホールディングス(HD)の斉藤猛社長は強調した。

    だが、出光興産の木藤俊一社長は「脱炭素化に向けた取り組みでは大きな手応えにつながらなかったという反省もある」と話すなど、現状では各社の脱炭素化を見据えた新規事業は十分に育っているとは言い難い。今後の相場動向によっては石油在庫の評価益などの業績押し上げ効果は剝落しかねず、各社には今回の好業績の恩恵を次の成長投資やエネルギー安全保障への備えにしっかり役立てる戦略が問われている。(永田岳彦)


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