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人生100年時代  安心の賃貸住宅契約とは 高齢者専門の不動産会社が挑む

世界有数の長寿国である日本。令和2年の平均寿命は男性(81・64歳)、女性(87・74歳)ともに過去最高を更新し、「人生100年時代」が現実味を帯びる。一方で、未婚や少子化も進み、高齢化を取り巻く課題が浮上する中、今後増えるとみられる高齢者の賃貸契約の壁もその一つだ。孤独死を懸念し交渉が難航する事例もあり、60歳以上の客を専門とする不動産会社も登場。国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の「住み続けられるまちづくりを」につながる活動として注目を集める。

高齢者を対象にした不動産仲介の店舗「下鴨ひろば」=京都市左京区
高齢者を対象にした不動産仲介の店舗「下鴨ひろば」=京都市左京区

《駅から11分 1K 賃貸アパート 3万5千円》

京都市内の賃貸物件を紹介する店舗「下鴨ひろば」(京都市左京区)には、物件情報が掲示され、店内に入ると、従業員から明るい声がかかる。賃貸物件を扱う店舗では、ありふれた光景だが、この店は対象とする客が60歳以上、従業員も全員60歳以上が占める「高齢者専用」だ。

「同世代の人が相談に乗ることで希望に沿う住まいを提案したい」。店舗を運営する不動産会社「フラットエージェンシー」の吉田光一会長(71)は狙いを説明する。同社は、京都市を拠点に不動産仲介業などを展開。2年前に開店した下鴨ひろばの従業員は、同社を退職後に再雇用された人材で、豊富な不動産の知識を生かして家賃や間取りなど客の希望に沿った物件を紹介していく。

現実にあぜん

きっかけは3年前に吉田さんが認知症に対する勉強会に参加したことだった。日本では令和7年には高齢者の5人に1人が認知症になるとされており、「高齢者向けのサービスを充実させたい」と決断した。

ただ、いざ営業を始めると75歳以上の後期高齢者が物件を探す現実に直面。「90代の人が住む家を探している現実もあり、あぜんとした」と振り返る。

高齢者が賃貸物件を契約する理由は、自宅の建て替えに伴う退去や伴侶を亡くし一人暮らしになることなどさまざま。一方、家主が最も懸念するのは孤独死だ。独居の高齢者らは敬遠され、賃貸契約が円滑に進まないことも少なくない。独居の場合、契約解除や居住者が残した所有物である「残置物」の処理に手間がかかるためだ。

「街づくり業」

こうしたハードルを下げるために、昨年国土交通省が残置物の処理について、入居契約時に残置物の処理を任せる委任状を不動産会社や家主側が受け取ることを可能とする新たなガイドラインを設けた。

同社でも弁護士への相談に半年費やすことなどもあったが、現在は取り扱う約7千の物件のうち約3千件を高齢者に紹介できるまでに至った。

下鴨ひろばでは遺言状の書き方講座など高齢者の生活を包括的に支援した取り組みも行う。ただ、入居者が認知症になった場合の対応など、さらに乗り越えるべき課題はある。

それでも、不動産業を「街づくり業」と称する吉田さんは「地域の課題は地域が解決しなければ。取り組みや法改正などを積極的に周知して住みやすい街をつくりたい」と意気込んでいる。

郊外の公営住宅利用も有効

高齢者の賃貸契約をめぐっては、認知症というさらなる課題も浮上する。総務省によると、65歳以上が人口に占める割合は昭和25年の4・9%に対し、令和2年は28・8%。22年には35・3%と見込まれる。団塊の世代が75歳以上となる7年は、5人に1人が認知症になるとされる。

入居者が認知症になれば、契約更新もできず、退去も難しくなる。こうした入居後の不安解消のため、一般財団法人高齢者住宅財団(東京都)では、都市再生機構(UR都市機構)と協力し、横浜市と千葉市の2カ所の高齢者向け住宅の管理運営を実施。段差をなくしたバリアフリーの玄関や緊急通報ボタン付きのトイレを設置した。また管理人を常駐させ、医療機関や介護施設と連携し健康管理や家事の補助まで包括的に行う。近くには老人ホームも用意し、認知症への支援も整いつつある。

一方で、運営を始めた平成7年から入居者の平均年齢は10歳程度上がり、担当者は「管理人の仕事の負担が増えているという話を聞く」と話す。

不動産市場について詳しい賃貸未来研究所(東京)の宗健(そうたけし)所長(57)は、高齢者の持ち家率は8割近いとし、「高齢者の賃貸契約の壁は限定的ではないか」とみる。その上で賃貸契約を希望する高齢者については、審査が厳しくなりがちな民間だけでなく、公営住宅の利用を提案。「空き部屋が多い郊外の公営住宅の利用も有効策の一つ」と話した。(鈴木文也)

目標11「住み続けられるまちづくりを」 すべての人が十分で安全な家に安い値段で住むことができ、基本的なサービスが使えるようにする。誰も取り残さない持続可能なまちづくりをすすめる。


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