避難先からキーウへ 元留学生「街を建て直す」

    ロシアのウクライナ侵攻で東部ではなお激戦が続いているが、首都キーウ(キエフ)には避難先から市民が帰還し、復興に向けた歩みが始まっている。今月故郷に戻った女性は、いつ再開されるか分からない露軍の攻撃に恐怖を感じつつも「破壊された街を建て直す」と日常を取り戻す決意を語った。

    ミサイル攻撃を受けたキーウ中心街のマンション =4月30日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)
    ミサイル攻撃を受けたキーウ中心街のマンション =4月30日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)

    キーウ在住のユリア・サリャモヴァさん(34)はロシアの侵攻後、60代の父親とともに西部ウジホロドに住む弟一家のもとへ。そこでの避難生活は約2カ月半に及んだ。

    日本への留学経験があるユリアさんは、交流サイト(SNS)を通じて産経新聞の取材に応じ、「ミサイル攻撃の脅威は残っているが、家に帰りたかった」と心境を明かした。

    夜行列車に飛び乗り、約800キロ離れたキーウまで戻った。1人暮らしをしていたアパートは爆撃されることなく残っていた。「うれしかった。守ってくれたウクライナ軍に感謝したい」

    侵攻前と比べれば人や車は少ないが、避難先から続々と市民が戻っている。公園では子供が遊んでいる。地下鉄の利用者も多い。営業を再開するレストランも増えた。だが「戦時下の日常」であることに変わりはない。

    「1日に2、3回空襲警報が鳴り、戦争中だということを思い出す」。道路の要所に検問所が設けられ、人の出入りが厳重にチェックされているほか、駅には警察官が配置され、利用者のパスポートを入念に確認している。

    スーパーには十分な物資が届いているが、ガソリンが不足しており、スタンドに5キロほどの行列ができる日もある。

    キーウから逃れるときは、美しい街並みが現在進行形で破壊されていくことに涙が止まらなかった。今は道路に並ぶバリケードや検問所、壊されたビルを見るにつけ、変わり果てた姿に無念さが募る。

    「インフラを復興させ、強い街をつくりたい。侵攻前よりも文化的で、先進的な街に」。それがユリアさんにとっての、これからの戦いだ。

    ロシアによる侵攻は終わりが見えない。露軍はキーウ周辺から撤退後、東部や南部の制圧に狙いを定め、戦力を集中しているとされる。友人の弟は激戦地のマリウポリで脚に重傷を負ったと聞いた。

    一刻も早く普通の日常を取り戻したいと切に願う毎日だ。「再び自由に幸せに暮らせるように、戦争終結とウクライナの再建に力を貸してほしい」と訴えた。(木村郁子)


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