ビジネスパーソン誰もが感じていることのように思いますが、今まさに企業と働き手の関係は大きな変化のただ中にあって、ひと昔前のように新卒入社しその会社で責任ある役割まで登っていき、後輩たちの面倒をひとわたり見たら定年し粛々と悠々自適の生活に入る。という昭和の終身雇用モデルがもはや典型的とも言えない時代です。
どんな事象にも功罪があるとすれば、そんな勤め先への帰属を意識面でも実質面でもひたすら軸にして組み立てるキャリアプラン、生活設計が見通しにくい時代に大きな不安を感じるのもまた人情ですが、一方で会社から独立することで感じる開放感と自由の爽快感もまた一度きりの人生には貴重なものとも感じます。
そう言われてみれば、筆者自身を含めて何らかを立ち上げた人と名刺交換をする機会も大変多くなりました。そんな時いつも微笑してしまうのは、気合の入った名刺にオフィス、ホームページの三点セットです。事業立ち上げの高揚感、意気込みもさることながら、仕事の実績に誇るものがない創業期だからこそ信用を得られるだけの体面を保ちたいとの切実な心理も働きます。
とは言えこの「カッコから入る」式の立ち上げスタイル、微笑ましいレベルならば良いですが、それこそ大企業の相似縮小形のような結構な人員と組織まで抱えだすと、逆にお付き合いする先としては心配になります。むしろ凄みと強さを感じるのは、一見地味で質素に見えて、“わらしべ長者”のような体でコツコツと小さな手堅い成果を積み上げて高みまでの登る企業の方であるかもしれません。
今では世界企業のユニクロだって一昔前はまだまだ良い意味泥臭さを感じさせてくれる部分が多々ありましたし、サイゼリア、ニトリなど東京発祥でもなく、大きな資本でもない個人が立ち上げた企業が、ジワジワと生活者に支持されて押しも押されもせぬ存在になりおおせたことには市場の健全さとたくましい起業家魂の存在を感じ、まだまだ日本も捨てたものではないなとさえ思わせてくれます。
スーパーマーケット駐車場の露店から銀座旗艦店への成功譚
DAISO晴れての銀座でのグローバル旗艦店オープンは、当初事業規模がまだまだ小さかったゆえに「大きく創る」の志を名にしたという、最初はスーパーマーケットの駐車場に露店方式で店を構えることが出発点だったDAISOを運営する大創産業(本社:広島市)の象徴的な到達点に違いなく、目を見張らされます。
・ダイソー銀座進出 1兆円市場の最大手でも挑戦者「ここがゴールじゃない」
ユニクロの旗艦店ユニクロTOKYOが大々的にメインテナントとして入る世界的な建築家ヘルツォーク&ド・ムーロンが内外装の改築デザインを施した意欲的な商業施設東京銀座マロニエゲート2。
そもそも銀座の街自体が世相を表す鏡のような街と言われているわけですが、この銀座3丁目の“館(やかた)“自体、新築時は鳴り物入りでフランスの百貨店ブランド“プランタン”を誘致したものだったわけですから、まさに時代の変化と、100円(税抜き)ショップ業態の雄がユニクロと並ぶ令和消費社会の堂々たるメインストリーマーにたどり着いた象徴的な出店と言えます。
しかも初めての、300円ショップ「THREEPPY(スリーピー)」、日用品などを扱う「StandardProducts(スタンダードプロダクツ)」、そして100円均ショップのDAISOという3業態での出店ということで、インフレ傾向の日本市場を見据えた、今後の大創グループとしての前広な展開も見据えた出店です。