【ロンドン=板東和正】北大西洋条約機構(NATO)加盟を申請した北欧のフィンランドとスウェーデンにとって、当面の最重要課題は加盟が承認されるまでの安全保障だ。両国の加盟が実現すれば、NATOは戦略上重要なバルト海の大部分を取り囲み、強固な対ロシア包囲網を構築することになる。対抗措置を警告しているロシアが、軍事的圧力を強めたり、サイバー攻撃に出たりすることが懸念されている。
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露艦隊をNATOが四方から監視
北欧2カ国がNATOに加盟すれば、北極圏から地中海までの加盟国がつながり、ロシアと加盟国の国境は現在の2倍以上の長さになる。バルト海に面するロシア領カリーニングラードの露艦隊拠点をNATOが四方から監視することも可能となる。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のコリン・ウォール研究員は「ロシアは多くの資源を北西部に割くなど防衛計画を変更せざるを得ない」と分析する。
ロシアは警戒感を強めており、バルト海方面に核兵器を配備することを示唆する。プーチン露大統領は16日、NATOが北欧2カ国で軍事インフラを増強した場合、「無条件で対抗措置をとる」と恫喝(どうかつ)した。北欧2カ国では、NATOの集団防衛義務が適用されない申請期間中に攻撃を受けることへの懸念が強い。
加盟前でも軍事支援
これを受けて英国は11日、フィンランド、スウェーデンの両国と相互安全保障に関する合意文書に署名。北欧のノルウェーとデンマーク、アイスランドは16日、フィンランド、スウェーデンがNATO加盟前に攻撃された場合には支援する用意があると表明した。NATOのストルテンベルグ事務総長もバルト地域への部隊派遣を増強するなど対応をとる方針だ。
ロシアはウクライナ侵攻に戦力を集中的に投入しており、他国に戦線を広げる余力は小さいとの見方もある。英国の国際政治学者、アリステア・シェパード氏は「(軍事的コストが比較的少ない)サイバー攻撃により、フィンランド、スウェーデンのガスや鉄道など社会インフラに被害を与える恐れもある」とみる。