コロナ直言(20)

    脱マスクはなぜ必要?子供へのリスク直視を 大阪大特任教授・大竹文雄氏

    《新型コロナウイルス対策のマスク着用について、専門家有志が19日、屋外では会話が少なければ必ずしも着用は必要でないとする見解案を示した。2歳以上の未就学児の着用の弊害も指摘された》

    インタビュー取材に応じる大竹文雄・大阪大特任教授=18日、大阪府豊中市の大阪大(渡辺大樹撮影)
    インタビュー取材に応じる大竹文雄・大阪大特任教授=18日、大阪府豊中市の大阪大(渡辺大樹撮影)

    マスクの効果と弊害を考えることが重要で、まずは感染の可能性が低い屋外や、成長過程にある未就学児から「解禁」するのは当然といえる。

    オミクロン株が感染の主流となってからは、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の場で、屋外ではマスクを着用する必要はないと提言してはどうかと訴えてきた。だが医療の専門家は「対策を緩めると、感染リスクが高まる」との考えを崩さず、「脱マスク」はなかなか進まなかった。

    医療関係者はそもそもコロナ禍以前から職務上マスクを着けており、着用に違和感を覚えないのではないか。分科会メンバーの中でも感覚に差があった。表情が分かりにくくなるなど感染以外のリスクを多様な観点から分析して、新様式を打ち出さなくてはいけない。

    《マスク着用が常態化し、教育関係者からも子供の発育に影響するとの指摘もある》

    先日、あるテレビ番組を見て驚いた。①サングラスとマスクをしている人と②サングラスだけの人。どちらが不審と思うか児童に尋ねたところ、答えは後者だった。理由は「マスクをしていない人が悪い人」。大人はこうした現実を直視し、「子供がマスクを外すには、まず大人が範を示さないといけない」と方向付けていくべきだ。

    《世界では脱マスクにかじを切る国が少なくない中、日本では義務でもないのに多くの人がマスク着用を続ける》

    ワクチン接種が進み、コロナ感染による重症化リスクは低くなっている。それでも、日本人が屋外ですらマスクを着け続けるのは「みんながそうしているから」という同調圧力があるからだ。ツイッターの日本人利用者には匿名アカウントが多いのは、自分が何者か分からないよう匿名性を求める傾向が強いからともいえる。単に「外していいですよ」というアナウンスだけでは効果は限定的だろう。子供の発育への影響のように、不必要な場面でのマスク着用にはリスクが潜んでいる。こうした「失うもの」についても、より理解を促すべきだ。

    日本人は社会的なイメージを大切にする国民だ。だからこそごみを拾ったり、きちんとマスクをしたりする。マスクで顔の半分が隠れる匿名性が高い文化が定着すれば、そうした日本人の良さは失われる可能性もある。

    《6月以降、水際対策が緩和され、マスクをしていない外国人観光客を目にする機会も増える見通しだ》

    「必要以上にマスクをしなくてもいいんじゃないか」という意識の変化につながるだろう。コロナと共存する「ウィズコロナ」に本格的に入ったと実感する象徴こそ脱マスクだ。新たな光景は、「過剰にコロナを恐れなくていい」という安心感を視覚的に与えるはずだ。(聞き手 五十嵐一)

    おおたけ・ふみお 大阪大感染症総合教育研究拠点特任教授(行動経済学)。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会メンバー。大阪大大学院博士課程修了後、大阪府立大講師、大阪大教授などを経て現職。著書に「日本の不平等-格差社会の幻想と未来」(日本経済新聞社)など。

    コロナ禍で常識となったマスクの着用。その着脱をめぐる議論が、熱中症リスクが高まる夏を前に本格化している。私たちはマスクとどう向き合うべきか。専門家が「直言」する。


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