「未来の鉄道」へ積極投資を 古宮・JR九州社長

    JR九州の社長に就任した古宮洋二氏(59)が23日までに産経新聞の取材に応じ「鉄道の進化」に向けて積極的に投資する方針を示した。同社の社長交代は8年ぶりで、会社はコロナ禍からの業績回復の途上にある。古宮氏は「鉄道に未来はないという人がいるが違う。未来の鉄道は自分たちでつくればいい」と抱負を語った。インタビューの詳細は次の通り。

    インタビューに応じるJR九州の古宮洋二社長
    インタビューに応じるJR九州の古宮洋二社長

    「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という(米国の)映画が好きで、最後のシーンに「未来は自分たちがつくるものだ」という博士のセリフがある。「鉄道って節約ばかりで未来がない」という社員がいるが、未来に向けて、新しいことに取り組んでいこうと呼び掛けている。

    鉄道事業では、特に設備検査に新技術の活用を進める。一定の周期で検査し、設備を取り換える「時間基準保全」(TBM)から、新たな技術を使って状態を把握し、設備が悪くなる前に修繕する「状態基準保全」(CBM)への転換を目指す。

    カメラを搭載した車両「RED EYE(レッド・アイ)」を線路設備の点検に活用しているが、線路を歩いて保守点検するなど、人海戦術に頼っている仕事はまだたくさんある。機械化、自動化を進めれば社員は判断する仕事に特化でき、安全性向上やコスト削減にもつながる。また、乗客の趣向に合わせた鉄道の旅を提案するなど、鉄道収入を伸ばすためにも新技術を活用したい。

    将来の駅として、切符を持たずに列車に乗れるような姿もイメージしている。改札機のような場所を通るだけで、顔認証などで口座から運賃が引き落とされれば、本当の意味でチケットレスになる。

    コロナ禍で鉄道の収入が半減するなど今までにない状況を経験した。経費削減を進めてきたが、これからは積極的に投資をして新しい鉄道をつくりたい。縮小傾向から脱却するには、まず元気な会社にしないといけない。そうすれば新しい知恵も出てくる。

    × × ×

    4月に地域戦略部を7人態勢で発足した。以前は「市長、駅長、警察署長」といわれるほど、駅長は地域で一定のポジションを持っていたが、ローカル線を中心に乗客が少なくなり、駅管理の委託化や無人化を進めたことで地元との付き合いが薄くなってきた。

    地域戦略部の社員は自治体に足を運び、「ご用聞き」をする中で、地元とのつながりを復活させる。自治体が困っていることを解決し、商売にもつなげたい。

    ローカル線の活性化も大きなテーマだ。「JR九州は黒字で鉄道はもうかっている」と言われることがあり、状況が理解されていないと感じている。(線区別収支の)データを出せる分は公表しているが、まずはこの30年間で乗客が少なくなったことを分かっていただきたい。国も有識者会議を開き、ローカル線のあり方に関する議論を進めている。自治体のトップと積極的に会い、連携が取れる関係にしたい。

    9月23日に(佐賀と長崎を結ぶ)西九州新幹線が開業する。開業効果を最大化するため、佐賀県や長崎県と一緒に取り組んでいく。佐賀の唐津線などローカル線の活性化にも力を入れる。まずは武雄温泉―長崎が開業することで、佐賀、長崎両県がどう変わるかが、将来(全線開業)に向けての一つのキーポイントになると思う。(一居真由子)

    古宮洋二(ふるみや・ようじ) 昭和37年生まれ。福岡県行橋市出身。昭和60年、九州大学工学部卒業後、日本国有鉄道に入り、62年の国鉄分割民営化に伴い、JR九州に入社。総務部長、常務取締役鉄道事業本部長、取締役専務執行役員総合企画本部長などを歴任し、4月から現職。


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