「スタグフレーションが来る」報道の違和感 エネルギー価格の消費減税も選択肢に

「スタグフレーション」という言葉を目にすることがあるだろうか? これは停滞(スタグネーション)とインフレ(インフレーション)を組み合わせた言葉だ。高いインフレと高い失業率が共存する現象を意味する。

欧米を中心として1970年代初めの第一次石油ショック後に、スタグフレーションが話題になった。最近では、ウクライナ戦争やコロナ禍でのエネルギー不足と世界経済の不安定化を背景にして、再びスタグフレーションが注目を浴びている。日本でもガソリン、電気・ガス代、さまざまな食品の値上げと、他方でコロナ禍から十分に回復していない国内経済を合わせて、スタグフレーションの出現を喧伝する人達も多い。

ウクライナ東部ハリコフ郊外で、ロシア軍との戦闘で損傷した学校を調べるウクライナ兵=20日(AP=共同)
ウクライナ東部ハリコフ郊外で、ロシア軍との戦闘で損傷した学校を調べるウクライナ兵=20日(AP=共同)

インフレの主因は

ウクライナ戦争は現段階では長期に及ぶ悲惨なものになる可能性が大きい。もちろん戦争ほど不確実性の大きいものはないので、あくまで長期になるというのは現段階での見方だ。ロシアへの経済制裁は、当初の金融制裁から次第に石油の禁輸から、徐々にロシア資源経済の中核である天然ガスをめぐる制裁が焦点になってきている。

他方で、フィンランドやスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)に加盟することで、新たにロシアとの緊張が高まり、ロシアはフィンランドへの天然ガスの供与を停止した。このような西側社会とロシアとの制裁合戦もまた長期間に及ぶことだろう。

日本ではスタグフレーションのうち、最近はインフレに注目するマスコミの報道が多い。欧米と一緒に報じられることも頻繁になった。しかし米国、欧州(特にEU)、日本とはかなりインフレをめぐる状況が異なる。

日本のインフレはふたつの特徴を持っている。1)エネルギー価格の高騰、2)経済の“実体”の弱さだ。最新の消費者物価指数(2022年4月)では、すべてこみこみの総合は、対前年比で2.5%のプラス。これだけ見ると前月の1.2%から大幅にジャンプしているが、もちろんその認識は正しくはない。特殊要因だった携帯料金の値下げ分が統計処理上、剥落しただけだ。言い換えると、いままでもこの特殊要因を意識して物価の変動を見ていなければならないだけで、今回のジャンプで「インフレが急激に悪化した」とするなら相当に誤解を招く表現だろう。

前月までは携帯料金の引き下げ効果(=寄与度)が、1.42ポイントほどあった。それが今回の引き下げ効果は0.38ポイントだ。他方で、エネルギー価格の物価引き上げへの寄与度は、1.38ポイントにもなる。実際にこのエネルギー価格の上昇が、物価上昇の本当の“主犯”である。生鮮食品を除く総合では、まだ対前年同月比で2.1%の上昇、だが、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数では、対前年比が0.8%まで低下する。

エネルギー価格自体は、対前年比で19.1%(寄与度1.38)上昇しているが、もう少し中身を具体的に見ておこう。エネルギーの各項目別では、電気代(対前年比21.0%、寄与度0.69)、都市ガス代(同23.7%、 0.21)、プロパンガス(同7.9% 0.05)、灯油(同26.1% 0.11)、そしてしばしば話題になるガソリン(同15.7% 0.32)だ。ガソリンのインフレへの寄与度も大きいが、電気代、ガス代の負担増も相当なものだろう。生鮮食料品の値上げも目立つが、なによりもエネルギー価格の高騰こそが日本のインフレの主因である。

なお先月の物価指数では注目された牛丼の値上げについては、今月は落ち着いている。先月では、森永卓郎教授(獨協大学経済学部)が「吉野家の牛丼が高ければ親子丼を食べればいい」という提案をしていた。ご子息の経済アナリスト森永康平氏の文化放送「おはよう寺ちゃん」での発言によれば、卓郎教授は、株の優待券で親子丼を食べている可能性があり、それで誤認識をしているという。なぜなら吉野家では親子丼(並盛)の方が牛丼(並盛)よりも高いからだ。これを「森永卓郎マリーアントワネット問題」と呼称される。閑話休題。

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