東京都は25日、首都直下での発生が予想される4つの地震の新たな被害想定を公表した。都内で最大規模の被害が想定されるマグニチュード(M)7・3の「都心南部直下地震」では、震度6強以上の揺れが23区の約6割に広がり、建物の被害は19万4431棟、死者は6148人に上ると算定。避難者は約299万人に達するとした。
平成24年の被害想定公表以来、10年ぶりの見直し。都心南部直下地震のほか、多摩東部直下地震(M7・3)▽立川断層帯地震(M7・4)▽大正関東地震(M8クラス)-の3つを都内で大きな被害が見込まれる地震として被害想定の対象とした。
都心南部直下地震では江東区や大田区、江戸川区などで震度7の地域があり、揺れや液状化、急傾斜地の崩壊により都内全体で8万2199棟が全壊。地震の発生を冬の午後6時、風速8メートルと仮定した場合、11万2232棟が火災で焼失すると算出した。
死者のうち、3666人が建物の倒壊や屋外での落下物直撃など、2482人が火災による被害。負傷者は9万3435人、うち重傷者は1万3829人に上るとした。
多摩東部直下地震では武蔵野市や三鷹市などで震度6強の揺れが生じ、都内全体で7万108棟が全壊。死者は4986人、避難者は約276万人に達すると算定した。
都心南部直下地震と多摩東部直下地震が30年以内に約70%の確率で発生すると予想されているのに対し、立川断層帯地震は0・5~2%、大正関東地震は0~6%。ただ、発生すれば被害は大きく、立川断層帯地震は建物被害が5万1928棟、死者が1490人、大正関東地震は建物被害が5万4962棟、死者が1777人に上るとした。
また、「海溝型地震」に位置付けられる大正関東地震に加え、南海トラフ巨大地震(M9クラス)についても発生する津波の高さを予想。最大で大正関東地震では約2・2メートル、南海トラフ巨大地震では約2・6メートルとした。
平成24年の想定は最大の被害をもたらす首都直下地震を「東京湾北部地震」(M7・3)とし、建物被害は30万4300棟、死者は9641人に上ると算定。今回は政府の中央防災会議の議論を踏まえ、都心南部直下地震に置き換えた。耐震技術や耐火性能の高い建物の増加などにより、想定される被害は10年前に比べ、小さくなった。