「月額0円」終了の楽天モバイル、勝負は半年後か 赤字解消でもユーザー流出の懸念

楽天モバイルが2022年5月13日に発表した新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」が、大きな波紋を呼んでいるようだ。

楽天モバイルの新しい料金プランが波紋を呼んでいる(Getty Images)※画像はイメージです
楽天モバイルの新しい料金プランが波紋を呼んでいる(Getty Images)※画像はイメージです

その理由は現行の料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」にある。これはその月の通信量に応じて料金が変化する段階制のプランで、自社エリア内ならどれだけデータ通信をしても料金が月額3278円を超えないだけでなく、通信量が1GB以下であれば月額0円で利用できる仕組みだ。

それでいて、月額0円の範囲内でも専用アプリ「Rakuten Link」を使えば国内通話が一部を除いて無料でできるなどのメリットが受けることができた。そうしたことから通信量を1GB以下に抑え、月額0円で利用することを前提に楽天モバイルを契約していた人も少なくなかったのである。

だが新料金プランでは月額0円で利用できる仕組みがカットされ、通信量をどれだけ抑えても月額1078円かかるようになってしまった。このプランは2022年7月1日より提供予定なのだが、楽天モバイルは料金プランが1つであることにこだわっていることもあり、現行プラン利用者も新プランに自動移行することとなる。

そうしたことから月額0円で楽天モバイルを使い続けられないことに対してSNSで批判や不満の声が多く上がった訳だが、なぜ楽天モバイルは月額0円を終了させる決断を下したのだろうか。

政府方針で強み失う

そもそも、楽天モバイルが月額0円の仕組みを導入するに至ったのはなぜかといえば、2020年4月に同社が本格サービスを開始した際、契約者300万人に対して1年間、月額料金を無料で利用できるキャンペーンを実施したことに端を発する。

自民党総裁選の決起集会で、集まった人たちに手を振る菅義偉官房長官(当時)=2020年9月14日午後、東京都港区(松本健吾撮影)

当時の同社の料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」は、月額3278円で自社エリア内であればデータ通信が使い放題という定額制を採用していたが、新規参入の同社はネットワーク整備がまだ追いついておらず、大半のエリアをKDDI回線のローミングで賄っている状況。他社回線では使い放題にならず定額制の仕組みを存分に生かせなかったことから、無料キャンペーンが続く1年のうちにエリアを拡大させ、料金に見合うサービスを提供できる体制を整えるのが狙いだった訳だ。

だが同年、安倍晋三元首相の病気による退任に伴い、菅義偉氏が首相に就任したことで状況は一変する。かねてから携帯料金引き下げに熱心だった菅氏が就任後、携帯大手に政治圧力をかけ料金引き下げを迫った結果、NTTドコモの「ahamo」に代表されるリーズナブルながら大容量通信ができるオンライン専用プランが相次いで登場した。エリア面で弱みのある楽天モバイルの料金的メリットが薄れ、窮地に陥ってしまったのだ。

そこで楽天モバイルは、2021年4月より提供開始したRakuten UN-LIMIT VIで月額0円の仕組みを導入。無料キャンペーンが終了したユーザーが、低価格化が進んだ他社サービスに流出しないよう、通信量1GBまでという制限はあるものの月額0円で使い続けられる仕組みを提供するに至ったのである。

その方針を一変させ月額0円を終了させるのはなぜかといえば、要は赤字解消のためだ。楽天モバイルは課題とされてきたネットワークの整備を約4年前倒しし、その結果2022年4月時点で人口カバー率97.2%に到達するなどネットワークの充実は図られたが、その分設備投資も前倒しでかかることになってしまった。

加えて仮想移動体通信事業者(MVNO)時代の契約者を除く楽天モバイルの契約者は491万に達した結果、多くのユーザーが楽天モバイルのエリアの外、つまりKDDI回線へのローミングも利用するようになり、KDDIに支払うローミング費用が赤字を増やす要因となってしまったのである。

その赤字は楽天モバイルの親会社である楽天グループの経営にも大きな影響を与え、無視できない規模となってきたことは確かだろう。そうしたことから楽天モバイルはユーザー数を増やすよりも赤字の解消を優先する方針へと大きく舵を切り、KDDI回線へのローミングを47都道府県で順次終了させローミング費用削減を打ち出しているが、それに続く動きとなったのが今回の月額0円の終了で、収入が見込めない割にコストがかかるユーザーを減らすに至ったといえる。

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