• 日経平均26431.55-722.28
  • ドル円144.55144.56

「SNSやネットニュースは人間を不幸にしている」慶大の幸福学者がそう考える残念な理由

PRESIDENT Online

インターネットの普及は私たちの生活を根本から変えた。それは幸福なことだったのだろうか。慶應義塾大学の前野隆司教授は「すべてのテクノロジーにはいい面と悪い面がある。インターネットもまた、使い方を誤ると危険があることを理解すべきだろう」という――。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AntonioGuillem
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AntonioGuillem

※本稿は、前野隆司『ディストピア禍の新・幸福論』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

幸せに生きていくためには、相手の気持ちを想像することが必要

以下は、わたしが遭遇した話だ。

ある会社の上司が、「あの部下は全然仕事をしない。あいつはダメだ。酷い部下だ」と怒っていた。そこで、当の部下に話を聞いてみた。すると、「あの上司はいうことがころころ変わるから結論が出るまで待っている」という。

このように、それぞれが自分の立場だけで状況を見ているから、いつまでもすれ違うことになる。恋愛も、国家間紛争も同じだ。

そうではなく、いったん相手の立場を想像し、実際に対話してみれば、「なんだ、そうだったのか」というような理由が互いにあることがわかってくる。

「部下はいまなにを考えているのか」「上司はいまどんな課題やトラブルを抱えているのか」と、相手の考えや気持ちを、感情に振りまわされずに考えられるようになる。

そうして相手の立場を考えられる想像力を活用すればするほど、自分の心に余裕が生まれるだろう。

「嫌な上司や同僚や部下がいる」と多くの人が嘆くが、根っからの悪人などいない。自分にとって「もともと嫌な人」はいないのであって、なにかの理由や背景によってそう見えているだけだ。

相手の気持ちを想像できることが、あなたが人とつながって幸せに生きていくために不可欠なのである。

人は「欲求」によって世界を見る

他者の立場に立ち、他者を理解するとは、他者の「欲求」を想像することともいえる。

わたしたちは、それぞれの欲求によって世界を見ている面がある。水を飲みたければ水を飲み、お金持ちになりたければお金持ちを目指すだろう。

人は自分の欲求のフレームで世界を見ていて、そんな欲求のフレームが世界には数限りなく存在する。

すべての人がすべての人の欲求を想像し、それぞれの欲求をともに満たすにはどうすればいいかを考え、対話し、合意を得ることができれば、みんなが幸せな社会をつくることができる。

だから民主主義は難しい

人間はむかし、民主主義というシステムをつくり上げた。すべての人の欲求や意見を尊重し、社会としての合意を形成するために、話し合ったり多数決をしたりして物事を決めることにしたのである。同時に、法という“飴と鞭のシステム”を設定した。良いことをした人は表彰し、悪いことをした者には罰を与えるために。

だが、民主主義は難しい。

なぜなら、多数決に従うと、同じ欲求を持つ者の数が多いほうが優勢になり、少数者の意見が顧みられなくなるからである。加えて、選挙(とりわけ直接選挙)は人気投票の面が強くなりがちである。

結果として人間はこれまで何度も独裁的な人物を代表者に選び、そのたびに大きな代償を払ってきた。

「ルールを守らない奴は悪人」という思考停止

しかも、飴と鞭のシステムでルール化すればするほど、人間は自分の頭で物事を考えなくなっていく。

もちろん、みんなで幸せな社会をつくるための最低限のルールは必要だが、ルールを階層化・精緻化し過ぎると、人はロボットのようにルールに従って生きていればいいだけになっていく。

コロナ禍の日本では、夜間外出などに対して罰を科せられるかどうかという議論があった。当初、若い世代に「仕方ない」「あってもいい」という意見が多く見られたのは意外だった。

もしかしたら、自分で考えるよりも、誰かに強制的に抑制されたほうが楽だという傾向が強まりつつあるのかもしれない。

だが、厳しい言い方をすれば、ただそのままルールに従うことはなにも考えていないに等しい。

大局観なく、どこかの誰かが決めたルールに従うことを強要する社会をつくってきた結果、「ルールを守らない奴は悪人だ」という短絡的な思考をする者が増えてきたとはいえないだろうか。


Recommend

Biz Plus

Recommend

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)