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コロナ収束期待した倒産店主の誤算 ゼロ・ゼロ融資返済本格化の影響は

新型コロナウイルス禍に直撃された事業者を支援する実質無利子・無担保の「コロナ融資」の返済が本格化している。「ゼロ・ゼロ融資」とも呼ばれるが、元金は返済しなければならず、長引くコロナ禍で業績回復が遅れる業界にとって大きな重荷だ。返済のめどが立たず倒産した飲食店主は、見通しの甘さを認めつつ「コロナがここまで長期化するとは」と肩を落とす。物価上昇の影響も重なり、今後の動向にも不透明感が広がる。

ジョッキなどを買い取る業者を見つめる藤井実さん(奥)=9日、奈良市
ジョッキなどを買い取る業者を見つめる藤井実さん(奥)=9日、奈良市

安易な気持ちで

5月上旬、奈良市の近鉄新大宮駅近くの繁華街にある「美食鍋ダイニング橘」。かつてサラリーマンでにぎわった8人掛けのテーブルには、箱に入ったままの未使用のジョッキやおちょこが200個近く積み上げられていた。壁にはかつて店を訪れたプロ野球選手のサインが飾られたままだ。

「脱サラして13年余り。楽しいことも多かったが、こんな形で終わるなんて」。経営者だった藤井実さん(62)は備品を整理しながら、寂しげな表情を浮かべた。

藤井さんが数百万円のコロナ融資を受けたのは、初めての緊急事態宣言発令などで客足が途絶えた令和2年の春のこと。返済が始まるのは2年後だが、「次の春にはコロナが収束しているだろう」と考えた。実質無利子・無担保も魅力的に見えた。「手元に現金があるのは心強い。金利ゼロで借りられるなら」と安易な気持ちもあったという。

「希望持てない」

現実は誤算の連続だった。切り札と期待したワクチンでも感染を収束できず、飲み薬はいつまでたっても出回らない。店の主力メニューはもつ鍋をはじめ10種類近い鍋料理。コロナ以前、特に書き入れ時の冬場は予約なしに入れないほど繁盛したが、客足はいつまでたっても戻らなかった。影響が長期化するにつれ、手元に置いておくつもりだった融資の数百万円はどんどん減っていった。

3年目に突入したコロナ禍。奈良県は蔓延(まんえん)防止等重点措置の適用を見送り、協力金ももらえない。

そんな中、コロナ融資の返済開始は着実に迫っていた。金融機関からは先送りも提案されたが、藤井さんは限界だった。「コロナがここまで長期化するなんて思ってもみなかった。希望が持てなくなった」。ひっそりと閉店を決めた。

「これは入り口」

コロナ禍で売り上げが減少した中小企業や個人事業主を支える目的で、政府系金融機関などが実質無利子・無担保で運転資金を貸し出すコロナ融資は令和2年3月に始まった。逆風下の事業者の「命綱」となってきたのも事実で、内閣府のまとめによると、その規模は昨年末時点で約232万件、総額は約41兆円。返済開始までの期間は個別に異なるが、融資から1~2年後とするケースが多い。

ただ、藤井さんの店のように業績の回復が遅れ、返済負担が重くのしかかる事業者は珍しくない。

民間信用調査会社の帝国データバンクによると、コロナ融資を受けた企業の倒産は2年7月~今年4月に全国で計282件(今月30日現在)。当初は毎月数件だったものの、今年3月以降は30件を超えるペースに加速している。

中小企業庁の担当者は「返済が倒産を加速させているとは感じていない」とするが、帝国データバンクの担当者は「これは入り口に過ぎない。今後も影響は広がっていくだろう」との見解を示す。

ロシアによるウクライナ侵攻や、円安に伴う原材料費の高騰の影響を懸念する声も上がる。中小企業の経営に詳しい立命館大の西岡正教授(経営学)は「コロナの影響が残る一方でインフレが加速し、中小企業はかつてないほど厳しい局面に立たされている」と指摘。今後インフレの影響がさらに強まると予測した上で、企業の経営体質改善のサポートなど「質的」な支援に重点を移す必要性を訴えている。(花輪理徳)


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