青森市 NPO法人「スマイルキャリアあおもり」工藤正之代表(58)
新型コロナウイルスの感染拡大で2年続けて中止となった青森市の「青森ねぶた祭」(毎年8月2~7日)。今夏、3年ぶりの開催に向けて準備が進む。そのねぶたの基本的な作り方や祭りの魅力を子供たちに伝える活動を行っている。「ねぶたは郷土愛、創造力、協調性などを育むすばらしい教材」と強調する。
平成元年に同市の青森観光コンベンション協会職員としてねぶたに関わった。しかし、全国に誇れる夏祭りでありながら、ねぶたのことをあまり知らない子供たちがいる現状に危機感を抱いた。ねぶたを子々孫々、伝承していくためには学校教育に取り入れることが必要と考えるようになった。
「ねぶた教育のすすめ」というキャッチコピーの下、27年に祭りの歴史やねぶたが完成するまでの工程などを解説した「ねぶた伝承強化書~地祭地承~」を1万3千部作成し、同市内の全児童に配布した。外国人向けに英語版も作った。
「地祭地承」という言葉は、地元の祭りは地元の人で継承しようという思いを込め作った言葉だ。「ねぶたは青森市民としてのアイデンティティーを確立すると信じている」という。
今年3月、運行用のねぶた作りに興味を持ってもらいたいと、基本となる「金魚ねぶた」を題材にした教科書「きほんのき」を完成させた。ねぶた師の立田龍宝さんの協力を得て、必要な材料や道具、紙張り、色付けの方法など作り方を分かりやすく解説。約400部作成し、関係団体に寄贈した。
小学校でねぶたに関する教育が行われ、児童が協力してオリジナルの「学校ねぶた」を作り、それを各町内で運行すれば、地域と学校の絆が深まるとのアイデアを持つ。「学校ねぶたを根付かせることで創造力、郷土愛、協調性、世代間交流につながり、やがてねぶた師の後継者育成や各地区で運行される町内ねぶたの底辺拡大にもつながるのではないか」といい、「教育と郷土文化の融合」を力説する。
さらに、町内ねぶたを観光振興の起爆剤にしたいとの思いも強い。同市内ではねぶた祭に向けた機運を高めるため、地区によっては7月から8月末まで町内ねぶたが運行される。〝本番〟はわずか6日間だが、町内ねぶたは2カ月間という長丁場。これをコロナ後の滞在型観光に結び付けられればと考えている。
実現にはハード、ソフト両面で課題は多いが「町内ねぶたは、文化の継承、保存と観光振興につながる二面性がある」と感じている。ねぶたを通して、少しでも青森県全体の発展に貢献したいとしている。(福田徳行)