塩野義製薬の飲み薬 緊急承認制度適用、審議へ

    厚生労働省は、塩野義製薬が開発している新型コロナウイルスの治療薬に関して、「緊急承認制度」を適用した承認の可否を専門家による審議会で審議する方針を固めたことが4日、分かった。早ければ今月中にも審議する方向で進めている。塩野義の飲み薬が実用化されれば、初の国産飲み薬として国内での安定供給に期待が寄せられている。

    5月に施行された改正医薬品医療機器法(薬機法)に盛り込まれた新制度「緊急承認制度」を適用して判断する第1号になる見通し。塩野義は今年2月、国内企業としては初めて、製造販売の承認を厚労省に申請していた。その際、希少疾患などで患者数が少ない医薬品を想定した「条件付き早期承認制度」の適用を求めていたが、緊急承認制度に適用を切り替えて審査される見込みとなった。

    新制度はパンデミック(世界的大流行)やバイオテロなどの緊急時の活用を想定している。安全性が確保され、一定の有効性が「推定」されれば使用が認められる。2年程度の期限付きで、その間に有効性が示されなければ承認は取り消される。

    緊急承認制度が適用されれば、明確な効果の確認が必要な条件付き早期承認制度に比べて承認のハードルが下がる可能性がある。ただ、適用要件である、感染状況の緊急性や、代替の治療手段の有無についても議論されることになる。

    塩野義の飲み薬は細胞内に入ったウイルスの増殖を抑える働きがある。臨床試験(治験)では、感染力のあるウイルスの減少やオミクロン株に特徴的なせきや喉の痛み、息切れ、発熱などの症状の改善を確認している。一方で、事前に目標に定めた一部の症状改善効果を確かめられておらず、厚労省内には条件付き早期承認制度を用いた承認に慎重意見が広がっていた。

    緊急承認制度 感染症の流行など緊急時に、国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがある病気の蔓延(まんえん)を防ぐために必要な医薬品や医療機器を対象に、速やかな実用化を目指す制度。安全性は従来通り「確認」が必要だが、有効性が「推定」できれば期限付きで承認できる。他に代替手段がないことが条件となる。緊急時として原発事故やテロなども想定している。2年以内に有効性を確認できなければ承認を取り消す。条件付きで使用が認められる米国の「緊急使用許可(EUA)」制度を参考にしている。


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