【パリ=三井美奈】ドイツ連邦議会(下院)は3日、軍備増強に向け、1000億ユーロ(約14兆円)の特別基金を設ける法案を可決した。国防費は北大西洋条約機構(NATO)の目標値である国内総生産(GDP)比2%に達する見通しになった。財源確保のため、基本法(憲法に相当)が近く改正される。
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東西冷戦終結後、長く軍縮を進めてきたドイツにとって、国防政策の大転換点となる。ショルツ首相は法案提出を前に1日、下院で、「NATO欧州で、最大規模の通常軍になる。新時代への正しい対応だ」と意義を強調した。
特別基金はステルス戦闘機F35、大型輸送ヘリコプターCH47チヌーク、無人機ヘロンなどの購入にあてられる予定。独政府は2月末、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、基金の設置計画を発表した。
ドイツは基本法で財政均衡を定めており、基金のための起債には法改正が必要。3日には、基本法の新たな条文を定める法案も提出された。保守系野党、キリスト教民主同盟(CDU)が支持し、3分の2以上の賛成で可決された。
ドイツは欧州最大の米軍基地を抱えるが、冷戦終結に伴って国防費を1・2%まで削減。トランプ米前政権から「負担をケチる」と批判され、米独関係悪化の原因となった。2021年の国防費は530億ユーロ(約7兆4000億円)で、GDP比1・5%だった。
ロシアの脅威増大を受けて今年、欧州ではポーランドやリトアニア、スウェーデンなどが相次いで国防費増額の方針を決めている。