外国人観光客、受け入れ再開へ 円安も追い風

    新型コロナウイルス対策による外国人入国者数の上限が今月1日に緩和され、10日には外国人観光客の受け入れが再開する。再開を前に政府が行った「実証事業」で来日した外国人からはおおむね好意的な声が聞かれ、各自治体はコロナ禍で冷え込んだ経済立て直しに期待を膨らませる。マスク着用を含め、日本との感染対策の「温度差」は課題の一つだが、自治体は試行錯誤しながら受け入れ体制を整えつつある。(外崎晃彦、深津響)

    栃木県日光市の名所「神橋」前で県職員らがタイからの観光客4人を出迎えた=5月28日午後(県提供)
    栃木県日光市の名所「神橋」前で県職員らがタイからの観光客4人を出迎えた=5月28日午後(県提供)

    感染対策を評価

    「外国人観光客は日本人に比べて消費額が高く、経済効果も大きい。とにかく早い受け入れ再開を願ってきた」。日光や鬼怒川温泉などの観光地がある栃木県の担当者はこう話す。

    政府は受け入れ再開に向け、先月から海外4カ国を対象とした旅行客受け入れの実証事業を実施し、国内の12県が参加。栃木県は計6コース・最長7泊8日の日程で18人の外国人を受け入れ、日光東照宮や鬼怒川温泉、華厳の滝などを案内した。

    県によると、タイから参加した女性は「感染対策がしっかりしている。本国は安心して観光客を送り出せる」と評価。一方、米国の女性は「どこに行っても検温や消毒がある」とやや否定的な印象を持ったようだという。同行した県観光交流課の担当者は「マスク着用のお願いも、感染者が出たときの対応も、団体客ならば添乗員がいるから安心だ。今後、受け入れが個人旅行客にも広がった場合、どう管理するかが課題」と話した。

    同じく実証事業に参加した石川県はオーストラリアから8人を受け入れた。旅行客の男性は「日本の検査は厳しいと思っていたけれど、移動もスムーズにできた」と話し、満足そうな様子だったという。観光庁は実証事業を踏まえて受け入れ再開に向けた指針をまとめ、7日に発表する予定で、県の担当者は「指針に従い、受け入れを進めていきたい」と意気込む。

    感染症に強い事業環境を作る「グリーン・ゾーン認証」制度を導入し、早い段階から「コロナ後」の外国人誘客に力を入れてきた山梨県の担当者も「飲食店の感染対策など、受け入れ準備は万全だ」と力を込めた。

    円安も追い風に

    観光庁によると、10日からの受け入れ対象の国・地域は、感染リスクの低い98カ国・地域。国内での移動は当面、旅程を管理しやすい添乗員同行のパッケージツアーに限られるが、マスク着用に対する意識の違いを巡り、外国人観光客の受け入れに及び腰な自治体もある。東日本のある県の担当者は「マスクを着用しなくていいという意識で来られたら、住民は反感を抱く可能性がある。外国人の受け入れは今の段階ではちょっと早いと忌避する住民も少なくない」と話す。

    観光行政に詳しい東洋大国際観光学部の越智良典教授は「海外でマスクフリー化が進む中、観光客に対して警戒感を抱く住民もいる。『歓迎されていない』という印象が広がれば、日本が旅行先として敬遠される恐れもある」と話す。

    一方、世界経済フォーラム(WEF)が発表した2021(令和3)年の「旅行・観光競争力ランキング」で日本が初の首位になったことに触れ、越智氏は「数々の国の中から観光先として最高の評価を得たことは、多くの観光客を呼び込むチャンスになる」と指摘。円安が加速していることについても「質が高い日本のサービスや商品を相対的に安く買えることは、旅行先に日本を選ぶ決め手となる。円安を生かさない手はない」と話している。


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