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転落事故を防げ 異業種と組んで視覚障害者を守る鉄道各社

駅のホームからの転落事故が後を絶たない。国土交通省によると、令和元年度に駅のホームから人が転落した事故は2887件。このうち目が不自由な視覚障害者が巻き込まれたのが61件に達する。ホームドアの設置には多額の費用が必要となり、すぐに設置には至らない駅も多い。そこで鉄道各社は異業種と組んで視覚障害者を守る取り組みに乗り出した。

東京メトロがベンチャー企業のLiNKX(リンクス)と共同開発したアプリを使った視覚障害者向け道案内サービス(東京メトロ提供)
東京メトロがベンチャー企業のLiNKX(リンクス)と共同開発したアプリを使った視覚障害者向け道案内サービス(東京メトロ提供)

■東武は損保会社などと

東武鉄道は、損害保険ジャパン、困りごと解決サービスを手がけるプライムアシスタンス(東京都中野区)と共同で、駅構内や駅ビルなどを対象に、スマートフォンを使った遠隔案内サービスの実証実験を早ければ今月中にも始める。

視覚障害者の首から下げたスマホのカメラで撮影した画像と、GPS位置情報をプライムアシスタンスのコールセンターに伝送。オペレーターがモニターでその画像を見ながら案内する。

埼玉県内の東上線和光市駅、志木駅などで約半年間実施し、他駅への拡大も含めた本格サービスへの移行が可能かを判断する。

コロナ禍もあって外出を控える人も少なくないが、東武鉄道の担当者は「障害を持つ方も安心して鉄道を利用してもらえるような取り組みをこれからも続けていく」と話す。

プライスアシスタンスのサービスは、損害保険での電話による問い合わせのノウハウを生かしたもの。令和3年7月から視覚障害者向け遠隔サポートサービスを始めているが、騒音などへの懸念から鉄道駅構内をサービスの対象外としてきた。通信状況や列車の走行時でも安全に案内できるかを検証する。問題がなければ他の鉄道会社への展開も模索する。


■東京メトロはベンチャー企業と

一方、こうした視覚障害者を守る取り組みに早くから力を入れてきたのが、東京地下鉄(東京メトロ)。平成28年8月、銀座線青山一丁目駅で視覚障害者がホームから転落死した事故が発生した。

同年秋、東京メトロはベンチャー企業と協業による新サービスの開発プログラム「東京メトロアクセラレーター2016」を実施。そこにアプリ開発ベンチャー企業のLiNKX(リンクス、東京都港区)が参加した。

リンクスが開発したシステムは、駅構内の点字ブロックに表示した2次元コードをスマホのカメラで読み取ることで、現在地から目的地までの正確な移動ルートを導き出し、音声で目的地まで案内するというもの。

平成29年から地下鉄有楽町線辰巳駅などで延べ約170人の視覚障害者の協力を得て実証実験を実施。改札口からホーム上の列車のドア、トイレにたどり着けるか、2次元コードの検知精度、アプリの使いやすさ、音声ガイドの正確さ、混雑した場所でもスムーズに通過できるかといった点を何度も検証を繰り返し、ソフトウエアの改良をその都度重ねていった。

令和3年1月、両社は「shikAI(しかい)」との名称で本格サービスを開始。専用のアプリを公開し、辰巳駅のほか、豊洲、新木場など有楽町線の駅を中心に9駅で利用できる。

■ホームドアの設置は億円単位に

駅にホームドアを設置すればほぼすべての転落事故は防げる。しかしそれには多額の費用がかかる。国土交通省によると、ホームドアの設置にはドア1枚あたり約400万円。1両にドアが4つある10両編成列車の場合、約1億6千万円。上下線で約3億2千万円となる。ホームの数が多い駅、さらにホームが老朽化している場合は補強工事も必要となれば、それ以上となる。

コロナ禍で人の流れが変わったなか、運賃収入の減少もあって、ホームドアの設置は鉄道会社にとっては大きな負担になっている。

リンクスのサービスにはすでに西武鉄道も関心を示しており、異業種との連携による新サービスで視覚障害者を守る動きが広がっている。

(松村信仁)




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