ロシアのウクライナ侵攻で被災した同国避難民の支援が広がりをみせている。出入国在留管理庁によると、企業や団体、個人からの支援の申し出は6月1日時点で累計1574件。支援内容も住居や食料、仕事の提供など多岐にわたる。こうした中、社会の情報化、デジタル化が進んでいることに配慮した通信関連の支援も本格化している。格安携帯電話事業を手がけるベンチャー企業のエックスモバイル(東京都港区)は、スマートフォン貸し出しのほか、生活費など生活面の支援も始めている。
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ウクライナ避難民に対する通信分野の支援としては、NTTドコモやKDDIが3月から日本発ウクライナ着の国際電話やショートメール(SMS)無償化などを実施している。ソフトバンクグループは通話料などの無償化に加え、5月31日からスマホ無償貸し出しを開始した。避難民を受け入れる地方自治体などを通して申し込みを受け付けるもので、「2000台規模のスマホを用意している」(広報担当)という。
これに対し、エックスモバイルはさらに手厚い支援に乗り出している。スマホと通信費の無償提供に加え、ビザ申請サポートから来日後のフォローまでをサポートしているのだ。
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同社は創業以来、途上国の通信環境の改善に寄与する活動などに注力。契約者の通信料金の1%を途上国支援を行う団体に寄付してきた。木野将徳社長は今回のウクライナ避難民支援もその延長線上と位置づけ、「必要とされる限り、できる範囲で支援していく」と前向きだ。
5月14日午後、成田空港にウクライナ避難民5家族14人が降り立った。大阪の企業経営者ら有志が3月に立ち上げた「ウクライナ避難民を日本に迎える会」の支援を受けて、ポーランド経由で来日した。4月6日の1家族3人に次ぐ第2陣となる。
幼児を含む14人を迎えた同社の鈴木陽一技術顧問は避難民をねぎらいながら、スマホと公衆無線LAN「WiFi(ワイファイ)」を一体化した同社オリジナルの端末「スマートWiFi」を手渡した。
鈴木氏の役割はこれだけで終わらない。支援を求めるウクライナ人との接点となるSNS(交流サイト)の作成・運用から問い合わせや相談のほか、日本に迎え入れる避難民の選定やビザ申請など実務全般をこなす。食文化や習慣などの違いから慣れない日本での生活面のフォローも欠かさない。
「ウクライナ避難民を日本に迎える会」に参加する有志はそれぞれ本業で避難民を支える。同会副会長を木野氏が務めるエックスモバイルは母国に残る家族らとの通信費の面倒を見る。避難民の滞在先は、同会会長の砂田直成・スナダ建設代表取締役が運営する大阪市内のホテルだ。それでも避難民1人当たりの生活費は3カ月程度の滞在を想定すると約100万円かかるという。
同会の支援を受ける避難民はトルコにもいる。同国の実業家の協力により、戦災孤児を中心に173人を受け入れている。日本に迎え入れた避難民と合わせて200人近いが、砂田氏は300人まで支援すると明言しており、必要な資金は約3億円に達する。
木野氏は「われわれだけでは経済的に支援が難しくなる。自治体や教育機関などと連携したり、引き継いだりしていきたい」と話す。
出入国在留管理庁によると、民間企業からの支援の申し出は全体の4割以上にあたる700件以上に上っているという。今後は、企業が始めたさまざまな避難民支援を継続するための施策が求められる。(松岡健夫、青山博美)