「ウニのすし、いつも売り切れ」 客もスシロー「おとり広告」に合点

    回転ずし大手「あきんどスシロー」(大阪府吹田市)のウニ・カニをメインとした期間限定メニューについて、消費者庁は集客のための「おとり広告」に当たると認定した。仕入れが追いつかず客に提供できなかったのに、宣伝を続けたことを重く見た形だ。同社は過去の販売実績をもとに「十分な在庫量を用意した」が、オーダーが「予想をはるかに上回った」と釈明している。

    「おとり広告」として措置命令を受けた「あきんどスシロー」のテレビコマーシャルのシーン(消費者庁提供)
    「おとり広告」として措置命令を受けた「あきんどスシロー」のテレビコマーシャルのシーン(消費者庁提供)

    「好物のウニのすしを目当てに来店したのに、いつも売り切れだった。そういうことだったのか」

    大阪市北区のスシローの店舗でこの日食事をした同区の無職、佐藤重幸さん(74)は、スシロー側が行政指導を受けたことを知り、納得した様子でそう話した。

    「おとり広告」で集まった客を別の商品に誘導する手口は、飲食業界に限らず広く横行しているという。

    違反が多いとされるのが不動産仲介の業界だ。関係者によると、「駅近」「相場より安い」といった好条件の物件について、実際には賃貸借ができない状態にもかかわらず、「入居者募集中」と偽り、ネットなどで紹介。実際に来店した仲介希望者には「先ほど契約が成立した」として、別の物件を薦めるという。こうした物件は「おとり物件」と呼ばれている。

    近年では、新型コロナウイルス禍を背景とした違反もあった。大手ドラッグストアチェーン「ウエルシア薬局」(東京都千代田区)など2社は、在庫がないにも関わらず「マスク入荷」をうたったチラシを配布、令和2年3月に消費者庁から口頭での指導を受けている。

    おとり広告に詳しい染谷(そめや)隆明弁護士は、客の需要が企業側の予想を上回ったことで広告の商品が提供できなくなる今回のスシローのようなケースが目立つと説明し、「買えない商品を宣伝するという事態は避けなければならない。企業側は適切な広告の表現を心がけ、より責任を自覚すべきだ」と指摘している。


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