「人は育てられたようにしか育てられない」とはよく口の端に上る、耳慣れた格言のような言葉であるが、最近になって筆者は、この成句を連想させられる場面に頻繁に出くわしている。
それは、自身の母親と妹とのやり取りを見てのことなのだが、母親の側に立って見れば「やったようにやり返されていて」、妹の側に立って見れば「やられたようにやり返している」。つまり、妹が小・中・高校生だった頃の母親の妹に対する接し方と、今の妹の母親に対する接し方がそっくりなのである。
これも「人は育てられたようにしか育てられない」の類いなのかと、しみじみと想う。
もし、本稿を読んでいる受験生のお母さんが小・中学生の娘に対して、勉強しないことや成績が上がらないことを叱ってばかりいるとか、しょっちゅう声を荒げているとか、頻繁にネガティブな言葉をぶつけているとかだと…自身が老いた時の娘との関係に黄色信号が灯っていると思って、まず間違いない。数十年後、高齢者にありがちな自分のちょっとした拙い行動に対して、現在の娘に対する接し方と同じような態度を娘に取られること請け合いである。
親の精神状態も受験結果を左右する
そもそも、相手にどんな態度を取ってしまうかは、相手が何をしたか以上に、その時の自分の精神状態に因るところが大きい。以前、「夫婦仲がよいほうが子どもの受験は上手くいく」と言明したことがあるが、逆も然りである。
夫婦間のコミュニケーションが希薄だったり、夫と妻とのあいだで受験に関する考え方が食い違っていたりすると、子どもが母親のストレスの捌け口になってしまいがちである。
となると、どうやって子どもの成績を上げるか、子どもをいかにやる気にさせるか―といったことと併せて、日頃面倒を看ている親(特にお母さん)の精神状態をどれだけ良好に保てるかが、受験の結果を左右する要因になってくる。
受験生の親に必要な「受験メンター」
ならば、である。塾選びと並行して、お母さんの受験メンターも探してほしい。
日本メンター協会によると、メンター(Mentor)とは「人間的に信頼・尊敬でき、公私ともに安心して相談できる人」であり、「どのような相談でも、共に悩み、考え、支え、称えてくれる人」とある。
子どもの受験に即して言えば、「子どもの受験に少しでも関係することであれば、なんでも安心して相談できて、一緒に考え、支えてくれる人」となろうか。
例えば、数年前に自分の子どもの受験に成功したかつての職場の先輩とか、我が子の同級生の母親で兄・姉の受験が上手くいったPTA仲間とか、あるいは近所に住んでいるベテラン塾講師とか―である。
同時に塾選びの観点で考えれば、母親の眼から見て、「この教室長(校長)、なんでも親身になって相談に乗ってくれそうだな」「この算数の先生なら、安心していろいろと相談できそうだな」と思える塾がベターであることは言うまでもない。