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アジア安全保障会議での岸田首相基調講演全文 「外交・安保面での役割強化」

岸田文雄首相が10日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で行った基調講演の全文は次の通り。

アジア安全保障会議で基調講演する岸田首相=10日、シンガポール(共同)
アジア安全保障会議で基調講演する岸田首相=10日、シンガポール(共同)

現下の国際情勢

リー・シェンロン首相、ジョン・チップマン所長、ご出席の皆さん、長い歴史と高い名声を誇るこのシャングリラ・ダイアローグ(対話)の場で、基調演説を行うことを、大変光栄に思います。

本日は、ここにお集まりの皆さんと、現下の国際社会が直面する厳しい状況について認識を共有するとともに、われわれが目指すべき未来の姿について展望したいと思います。

そうした議論を展開するのに、このシャングリラ・ダイアローグほどふさわしい場所はありません。まさに、アジアは、世界経済の35%近くを占め、拡大を続ける世界経済の中心であり、一体性と中心性を掲げるASEAN(東南アジア諸国連合)を核に、多様性と包摂性のある成長を続けているからです。

今、ロシアによるウクライナ侵略により国際秩序の根幹が揺らぎ、国際社会は歴史の岐路に立っています。

国際社会が、前回大きな転換期を迎えたのは、約30年前のことでした。

世界が2つに分断され、両陣営の冷たい対立が再び熱を帯びてしまう可能性に人々がおびえ続けた「冷戦」が終わりを告げ、「冷戦後」の時代が始まった頃でした。

私の故郷、広島の先輩であり、私の属する政治集団「宏池会」の先輩リーダーである、宮澤喜一元総理は、「冷戦後の時代」について、日本の国会での演説で「新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まりと認識したい」と述べました。宮澤元総理は、わが国が安全保障分野で国際的に一層の役割を果たすことが求められている現実を直視し、大変な議論の末に、PKO(国連平和維持活動)協力法を成立させ、同法に基づき自衛隊をカンボジアに派遣しました。

宮澤元総理の時代から約30年。今、われわれはどのような時代に生きているのでしょうか。

パンデミックが起きて以降、世界は不確実性を一層増していきました。経済的な混乱が続く中、私たちは、信頼できる安全なサプライチェーンの重要性を認識するようになりました。

そして、世界がパンデミックから立ち直ろうとしている最中、ロシアによるウクライナへの侵略が起きました。これは、世界のいかなる国・地域にとっても、決して「対岸の火事」ではありません。本日ここにお集まりの全ての方々、国々が「わがこと」として受け止めるべき、国際秩序の根幹を揺るがす事態です。

南シナ海において、「ルール」は果たして守られているでしょうか。長年にわたる対話と努力の末に皆が合意した国連海洋法条約を始めとする国際法、そして、この条約の下の仲裁裁判の判断が守られていません。

そして、わが国が位置する東シナ海でも、国際法に従わず、力を背景とした一方的な現状変更の試みが続いており、わが国は断固とした態度で立ち向かっています。

この2つの海の間に位置する台湾海峡の平和と安定も、極めて重要です。

残念ながら、人々の多様性や自由意志、人権を尊重しない動きも、その多くがこれらの地域で起こっています。

さらに、北朝鮮は、今年に入ってから、新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)を含め、かつてない頻度で、かつ新たな態様での発射を繰り返すなど、安保理決議に違反して核・ミサイル活動を強化しており、これは国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦です。先日の安保理決議が拒否権により採択されなかったのは極めて残念です。私の政権が最重要課題としている北朝鮮による拉致問題も、重大な人権侵害です。

こうしたさまざまな問題の根本には、国際関係における普遍的なルールへの信頼が揺らいでいる状況があるのです。これが本質的かつ最も重大な問題です。

われわれが努力と対話と合意によって築き上げてきたルールに基づく国際秩序が守られ、平和と繁栄の歩みを継続できるか。あるいは、「ルール」は無視され、破られ、力による一方的な現状変更が堂々とまかり通る、強い国が弱い国を軍事的・経済的に威圧する、そんな弱肉強食の世界に戻ってしまうのか。

それが、われわれが選択を迫られている現実です。


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