• 日経平均27993.73-255.51
  • ドル円134.92134.93

市民利用15%の「演劇の聖地」 問われる公金投入の是非

兵庫県伊丹市の市立演劇ホール「アイホール」が岐路に立っている。多額の維持費や市民利用の少なさを理由に市が昨年、演劇以外の交流施設への用途変更を提案したのだ。演劇界からの反発で当面の存続が決まったが、予算は大きく減って、特色ある自主公演や企画の大半が打ち切りになった。小劇場ブームに乗って誕生し、「関西小劇場演劇の聖地」として全国の演劇関係者を支えたアイホールだが、ブームが去った今、いち自治体の公共演劇ホールの存在意義を考える時が来ている。

伊丹市立演劇ホール「アイホール」。駅前にある便利な立地で、多くの演劇人やファンに親しまれている=兵庫県伊丹市
伊丹市立演劇ホール「アイホール」。駅前にある便利な立地で、多くの演劇人やファンに親しまれている=兵庫県伊丹市

小劇場演劇ブームに乗り

アイホールは関西小劇場演劇ブーム真っただ中の昭和63年にJR伊丹駅前に開館した、演劇やダンスの専用ホール(最大300席)。全国の劇団を招聘(しょうへい)するだけでなく、民間から招いたプロデューサー(平成20年度からディレクター)が芸術監督的役割を担い、自主制作公演や人材育成、市民参加型の演劇ワークショップなどを積極的に展開してきた。

ホールの存続問題が浮上したのは昨年6月。市は市民の利用率が約15%と低いことや、毎年約9千万円に上る指定管理費などを理由に、演劇以外の施設に変更することを提案。市民対象の意識調査でも「用途変更」が57%と半数以上を占め、屋内アスレチック施設などの活用案が示された。

これに対し、演劇関係者や市民の一部が「アイホールの存続を望む会」を結成し、署名活動を展開。俳優の渡辺えりさんも藤原保幸・伊丹市長に存続を求める意見書を提出した。

当面存続も予算は縮小

市は演劇界などから利用率向上や経営改善の申し出があったとして、令和4年度から3年間は、演劇ホールとして存続させる方針を発表したが予算は大きくしぼんだ。

4年度の指定管理費は前年から3千万円以上の減額。市内の中学、高校の演劇フェスティバル「アイフェス‼」や多くの戯曲賞作家を輩出した「伊丹想流劇塾」など一部を除いて、自主制作や共催、提携公演の大半が打ち切りになった。

ディレクター制度もなくなり、3年度末で任を解かれた「劇団太陽族」の岩崎正裕さんは「自主公演もその企画者もいなくなれば、アイホールは単なる『ハコ』になる」と不安を口にする。

一方、「アイホールの存続を望む会」の呼びかけ人で、兵庫県豊岡市の芸術文化観光専門職大の学長でもある劇作家の平田オリザさんは「アイホールが日本演劇界のために担ってきた役割を考えれば、本来は首都圏の公共劇場のように、府県など広域の自治体で支援すべきだ。なぜ伊丹市民の税金を使うのかと問われれば、答えは難しい」と複雑な胸中を明かす。

平田さんは公共の演劇ホールの存在意義を「演劇鑑賞だけでなく、演劇を創作し、教育や地域の交流拠点でもあること」と指摘。存続の鍵に伊丹市民の理解を挙げ、「教育事業に力を入れて価値を認めてもらうなど、アイホールを市民の誇りにしてもらうことが重要だろう」と話した。(田中佐和)


Recommend

Biz Plus

Recommend

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)